木の葉の紅い狐
□第肆話
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サクラを庇ったのがユウカだと、カカシはすぐに気が付いていた。
「なんつー無茶な戦い方してんのよ」
心臓が
止まるかと思った――
ユウカの体を貫通した刀の切っ先から鮮血が滴り落ちる。
それが彼女のものであることなど、考えなくても分かった。
それが急所を外しており、致命傷にならないことは理解していたが、早くなった鼓動はなかなか治まってくれない。
嫌な汗が、じんわりと肌に滲む。
ユウカの実力なら、サクラの盾にならずとも始末はついたはずだ。
しかし彼女はそうしなかった。
自己犠牲――
その言葉が浮かんだが、彼女のそれは少し違っているような気がした。
自分の命を微塵も顧みない彼女の態度に、少なからず苛立ちが募る。
それと共に、言葉で言い表せないような感情が己を取り巻く。
否、その感情の名前におおよその検討はついていたが、認めたくないのも現実だった。
「気を付けて帰んなさい」
ユウカの言葉に我に返る。
筋肉質な男の体を肩に担ぐ彼女の足元には血溜まりができていた。
腹に受けた傷は塞がれることなく、鮮血がじわじわとユウカの体から流れ続けていた。
「っ……!!」
伸ばしかけた手は目標を失い、カカシは何事もなかったかのようにポケットに突っ込んだ。