木の葉の紅い狐

□第肆話
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カカシの声に、サクラは瞬時に身を屈める。

頭上を刀が通り過ぎた。


「しゃーんなろー!!」


振り返り様にクナイを取り出したが、すでに切っ先は自分に向けられていた。


「!!?(ダメ、避けきれない!!)」


襲い来る衝撃を覚悟した瞬間だった。

視界に誰かが飛び込んできたと思うと、その人物は自分を背にして立ちふさがる。


漆黒の髪と緋色の結い紐が揺れていた。



「え、ユウカ、さん……?」

「サクラ、下がってな」


身なりは暗部の後ろ姿だった。

しかし声はよく聞き慣れた、姉のように慕う忍のそれだった。




ユウカは苦痛に顔を歪める。

刀の切っ先は左の脇腹を半分ほど貫いていた。


「私の仲間に、手を出すな」


殺気を込めて、相手を睨みつけてやった。


「お、お前は……!!紅い、狐……!?」


男の目が驚愕に見開かれる。

呟かれた単語に口角を上げると、ユウカは敵に向かって踏み込んだ。


「ユウカ!!やめろ!!」



カカシの制止の声も聞かず、ユウカは体重を前に傾けた。


腹に刺さった刀が貫通する。

激痛が全身を走り抜けるが、そんなことに一々構ってなどいられなかった。


体ごと敵に突っ込む。

バランスを崩した男はそのまま地面に背をつける。

男の手が刀の柄から離れたのを見逃さず、ユウカは背負った自身の刀を抜いた。

馬乗りになったまま、男の心臓目掛けて刀を突き立てる。

男は呆気なく絶命した。


「ユウカねぇちゃん!?」


サクラの回りに駆け寄ったナルトが声を上げる。

サスケも彼ら同様少なからず驚いているようだ。


「あ、あの、ありがとうございます!!」


深々と下げた頭をサクラが上げるのと、ユウカが立ち上がり振り返るのは同時。

サクラは思わず息を飲む。


「……。(紅い狐、か)」


ユウカの狐の面は、返り血で真っ赤に染まっていた。


「ユウカねぇちゃん怪我してるってばよ!?」


ユウカの足元には血溜まりが出来始めていた。


「このくらい何てことはないさ」


そう言って、ユウカは絶命した男を担ぎ上げる。


「巻き込んで悪かったな。気を付けて帰んなさい」


ユウカの姿が消える。


「ユウカは……暗部、なのか?」


彼女は否定も肯定もしなかった。

サスケは黙ったままのカカシに問う。


「あんまり外で言うんじゃなーいよ」


ため息混じりに発せられた言葉に、彼らは大きく頷いた。






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