木の葉の紅い狐
□第肆話
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しばらくそうしていると、不意にドアがノックされる。
しかし返事をする前に、そのドアが開かれた。
「ユウカちゃーん、おはよー」
「今ノックした意味あるのか?」
顔を出したのはカカシだった。
能天気な笑顔のまま、彼はベッドの横に置かれた椅子に腰掛ける。
「具合はどう?」
「まぁ、普通です」
「そ。よかった」
カカシの片目が弓なりになる。
「てか、何しに来たんですか?」
「何って、お見舞い」
「はぁ……」
まさかカカシまで来るとは思わなかった。
生返事をしたユウカに、彼は彼女の黒髪をポンポンと撫でる。
「ユウカちゃん髪下ろしてるんだーね。可愛いじゃない♪」
「は?」
カカシが指先で弄ぶユウカの髪は、普段と違い下ろされている。
いつもの結い紐は額当てて共に傍のテーブルの上だ。
「ナルト達も言ってたけど、ユウカちゃんはユウカちゃんのままでいいんだよ」
「……まさか、さっきの見てたのか?」
ユウカの質問には答えずに、満面の笑みを返した。
「最悪だ……」
カカシの態度にユウカは頭を抱える。
まさか見られているとは思わなかった。
恥ずかしいことこの上ない。
恨めしそうに傍の男を見上げれば、そいつは愉しそうに笑っていた。
「そういえば、七班は任務じゃないのか?」
ふと気が付いた事実を口にする。
確かにナルト達は任務だからと、この部屋を出発した。
なのになぜ今この男はここにいるのか。
「んー?任務だーよ」
悪びれる様子もなくカカシは言う。
例の如くまた時間通りに現れない上司に、今頃ナルトが不満を洩らしていることだろう。
「さっさと行けよ……」
呆れたようにそう言えば、カカシはユウカの髪を弄りながら曖昧に返事をした。
TO BE CONTINUED...