木の葉の紅い狐
□第肆話
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「いっ!?」
カカシの右手がユウカの左脇腹を掴む。
全身に走った痛みに、ユウカは腹を押さえて蹲った。
止まっていたはずの血がじんわりと滲み出す。
「あっれー?傷口開いちゃったネ。急いで病院いかなくちゃーね」
わざとらしく言ってのけたカカシを、恨みがましく睨んでやった。
「(ちょ、涙目でそれは反則でしょーよ!!)」
ユウカの仕草に内心焦りながらも、それを悟られないように意地の悪い笑みを浮かべた。
「(いつか殺してやる……)」
不謹慎なことを考えながら、ユウカは渋々カカシに従った。
しかし、彼女はカカシの纏う雰囲気がいつもと違うことに気が付いた。
「アンタ、なんで苛ついてんだ?」
自分に向けられるそれが、普段よりもいささか刺々しい。
まさか読み取られるとは思っていなかったのか、カカシは驚いたように目を見開く。
そうして観念したように息を吐くと、至極真剣な眼差しをユウカに向けた。
「なんであんな無茶なことしたの?」
一瞬何を言われたのか理解できなかったユウカだったが、彼の視線が傷を負った自身の腹に向けられていることに気が付く。
「あんな戦い方しなくても、お前ならなんとかできたでしょ?」
「……あれが、私のやり方です」
きっと、今は何を言っても反発してくるだけなのだろう。
「もっと、自分の事を大切にしてちょーだい」
それだけ言うと、カカシはユウカに背を向けた。