Novel

□来世の記憶
2ページ/6ページ

「やっぱりここか…」


そこに立っていたのは、俺のクラスメイトであり、付き合っている相手。土方十四郎がいた。
真っ白な学校の壁に、真っ黒な学ランの色が映えている。


「よぉ、風紀委員さん。アンタもサボリかよ?」

「馬鹿言え、俺はお前を捜しに来たんだよ」


ハァ、と深く溜息を吐きつつ、ポケットに手を突っ込む様を俺はただ見上げて見ていた。


「ほらよ」


目の前にかざされた小さな物体。いきなり近くに出されたものだから、ピントが合わず、それが何なのかわからなかったが…


「…ライター?」


手に取ってみれば、先程見つからなかったライター。けれど俺のものではなく、十四郎のもの。


「何、吸っていいのかよ?」

「どうせ銀八の授業だ。サボったって問題ねぇよ」


そう言うと寝ころんでいる俺の隣に腰を下ろし、ポケットから自分の煙草を取り出した。


「そんなんでいいのか、副委員長…」

「構いやしねぇよ」


俺も起きあがって座り、煙草を銜え火を点けた。

それから、煙草を銜え火を待つ十四郎の方へ、顔を寄せる。

吐息も感じられるほどの距離で、ライターではなく俺の銜える煙草から火を点けてやる。

最初は驚いた顔をした十四郎も、目を細めて少し笑っていた。


フワリと俺たちの周りを漂う煙。
俺はしばらくただそれを見ていた。




*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ