連作

□白き優しさに包まれて
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「なぁヨミ、あれってなんだ?」


アークが、遥か天空に位置する白い光を指差しながら問うた。
眩しさに目を細めながらも、視線は逸らそうとはしない。
ヨミも同じように空を仰ぐと、あぁ、と納得したように言った。


「そっか、地裏には無かったもんな。あれは太陽っていって、まぁガイアストーンみたいなもんだ」

「たい、よう?」

「そ。ちなみに夜になると太陽のかわりに月っていう大きな星が出てくるんだ」


アークは興味深そうにヨミの話に耳を傾ける。
あんまり見てると目に悪いから気をつけろよ、と忠告を受けると、少し慌てたように手の平で光を遮った。


「雲…は確かあったよな。お前がさっきから気にしてる青い水溜まりは海だ。川とか泉とは違って――」


あれはこれはと絶えずに質問してくるアークに、ヨミは一つ一つを丁寧に答えてやった。
そのたびに驚いたり感心したりするアークに苦笑する。

やがて知りたかったことを全て聞けたのか、アークは満足そうな顔をした。


「ヨミって何でも知ってるんだな」

「少しは見直したか?」

「まぁね」


聡い子供ならば、何故そんなことを知っているかを疑問に思ったりするのだろうが、ヨミにとってはあまりそういったことを気にせずに、詮索をしないアークのような人間の方がありがたかった。
ついうっかりとぼろを出してしまっては、計画に支障を来すことになる。
それだけは絶対に避けなければならない。


「今ならじじいが皆をこの世界に住ませたいって言った理由が分かるよ。だってこんなに綺麗なんだもんな」


笑うアークは楽しそうで、どこかへ走り出してしまいそうな勢いである。

馬鹿なやつ。

そんな彼の様子を見て、ヨミは心の中で呟いた。
あれがそんな善意で動くわけがない。
全ては存在しない時間の為であり、決してあんな村人達の為ではない。
自分は今もこうしてアークを監視し、必要ならばとその喉元を狙っているというのに。
当の本人は何も知らないのだ。


「……ほんと、馬鹿なやつ」

「? 何か言ったか?」

「いいや、何も」


ヨミが何食わぬ顔で答えると、アークは気のせいかと思考を放棄した。
さっさと先に進もうと、止まっていた足を動かし始める。
ヨミもそれ以上は何も言わずに、箱の中へと入っていった。

晴天の空はどこまでも続いている。
アークは教えてもらったばかりの言葉を、嬉しそうに呟いた。







end

 
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