sweet misery
□メリーゴーランド
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なぜなら奴は、世話焼きなのだ。昔から、家族揃ってありがた迷惑なほどに。
なかなか噛み切れず、飲み込むタイミングのよくわからない生ハムとむしゃむしゃ戦っていると。
「おーい、これもう乾いてっぞ」
いつのまにか洗面所に姿を消していた鉄也が手にしていたのは、「――ちょ、ちょっと!勝手に触らないでよ!」お風呂場に下げておいた洗濯物。あろうことか下着付き!
鉄也は何食わぬ顔をして、ぶら下がるグレーでシンプルなデザインのブラジャーとパンツを見つめた。
「バッカじゃないの!?」
素早く片手を伸ばしてハンガーごと奪うと、あたしはそれを背中の方に回した。
「色気もねぇガキの下着なんざ見たっておっ立たねえよ――って痛!」
「最っ低!」
ハンガーでぶん殴ってやったら、おでこに直撃。鉄也はさして赤くもなっていないそこを擦りながら、玄関に向かった。
「蛍。」
「なによ、」
靴を履き、振り向いた鉄也はいつになく真剣な顔しちゃって。
なにを言うのかと思えば。
「お前、若い癖にシケた顔してんなぁ」