sweet misery

□メリーゴーランド
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「おい、俺の目の前で満ち足りた顔して二度寝すんじゃねぇ。」
「…むー」
「なんだその鳴き声。全然可愛くねーよ起きろ」
「……むーりー」
「無理じゃねえだろ、ほら、蛍」


勢いよく布団を剥がした鉄也は、首が座らない赤ちゃんみたいに頭がかくかく揺れるあたしを無理矢理起こした。
その体勢も数秒ともたず、布団に突っ伏そうとしたあたしの肩を、鉄也ががっしりと掴む。


「今朝の朝食はお袋特製サンドイッチ。中身はお前の好きな生ハムだ」
「…サンドイッチ?」


薄目を開ける前にわかった。鉄也が、あたしの目の前にサンドイッチが乗ったお皿をちらつかせていることが。

あたしは鼻がいい。
塩のきいた生ハムと、みずみずしいレタスの匂い。ふっくらとした噛み堪えのあるベーグル。イースト菌万歳だわ。あー、よだれが…。


「イタダキマス。」
「つーか先に顔洗って来いよ」


眉を寄せる鉄也に構わずに、あたしは大口を開けて噛り付いた。
鉄也は毎朝、あたしを起こしに来る。こうして、おばちゃんが作った朝ごはんを持って。
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