sweet misery

□夢から覚めても
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信じがたい、といえば、今のこの状況だってそうだ。


「森の入り口まで来たはいいけど、昨日はこのベンチまで辿り着けなかったんだよね」


木で造られたベンチは、少しもささくれ立ってなんかなくって、座り心地抜群。
わたしたちは隣り合って座っているのだが、相手が振り向いた瞬間、そおっと肩の先が触れ合った。
温かい。


「…え、えっと、じゃああなたは昨日、ずっと立ったままだったの?」
「そう。…ってか、ずっとではないけどね。ここに居たのはとても短い時間だったし」
「…痛く、なかった?」
「うん、痛かった」


アサはまた笑った。
子供みたいに、無邪気そうに豪快に笑ったから、今度は目尻に皺が出来た。魅力的だと思った。

足元を見る。わたしたちは裸足だった。


「どうして俺らが靴を履いてないか、知ってる?」


鬱蒼とした緑に囲まれた森の中。
緑と青のコントラストは、呼吸をする度に、わたしの身体中の毒素を排出して、きれいにしてくれているみたい。わたしは肩の出るデザインの、丈の長いワンピースを着ている。


 
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