Orange
□キミといる、奇跡
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「ちょっ…返してよ!」
再び手を伸ばすも、またも翻される。
「64点か。微妙だなぁ」
「うるさい!」
先ほど自分が零した言葉だけれど、他人に…基、コイツに言われるのは腹立たしい。
…というより、落ち着かない。
「次、村崎 陽斗」
先生が新たな名を呼ぶ。
それに反応する目の前の男。
私の答案を手にしたまま教壇に向かったため、私も後を追った。
「村崎、残念だったな」
「え?」
到着するなり先生が告げて、こいつ…村崎 陽斗(ムラサキ ハルト)は動きを止めた。
「隙あり!」
その隙に、陽斗の答案を取り上げる。
62点。
確認するなり陽斗に取り返され、逆に押し付けられる私の答案を受け取りながら、私は嬉々として席に着いた。
「やった!私のほうが高い」
「つってもたかだか2点だろ」
「それでも勝ちは勝ちー」
気分良く言うと、陽斗が私の髪を片手でクシャクシャと混ぜる。
すると、ドクリと跳ねる私の心臓。
思わずその手を払った。