物語1

□消えたサントハイムを探す為に。
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私は、薪割りの仕事を辞めた。


その時の、姫様の安堵された顔。

私は、二度と姫様に寂しい思いはさせまいと誓う。


私など、姫様のなんのお役にもたたないのだが・・・


姫様の、側にいたい。



しかし、それでは、どうやって資金を調達するか。



私は、姫様が寝付いた後。

自分が借りている宿屋へそっと戻り、神官服を脱ぎ、カモフラージュにメガネをかけて、酒場に向かう。

更衣室の鏡を見ながら、前髪を立てる。


嗅いだこともない匂いの、香水をつける。


店から支給されたスーツに腕を通し、


私は、酒場で働く。


最初は、バーテンの仕事だった。

酒など作ったこともなかったが、マスターにレシピを教わり、分量通りに配合する。

シェイカーを振る仕草も決まりがあるようで、
私は先輩に教わりながらそれを身につける。


私は、この仕事をするまで・・・というか、このような仕事を自分がするとは思いもしなかったが、

ここで働く人をどこか見下していた。
職業差別など、神官としてあるじまきことなのだが、私は、心の奥底で、彼らを軽んじていた。


しかし、彼らは彼らなりに立派であった。


お客様のグラス、表情、会話の様子などを注意深く見て、気持ちの良いサービスをする。


それは、相手を思いやらなければできないことだ。


私よりも、彼らのほうがはるかに、気配りが出来たり、相手の望む言葉をかけることが出来る。


それは、いくらお金をもらっているとはいえ、優しさがないとできないことだ。

そして、人の優しさを金で買うエンドールの人々・・・。

彼らは、彼らなりに救われているのだろう。

そういう人がいる、という前提で、「人を救う」ということを私は、神官として考えるべきなのだ。


バーテンの仕事は、金にもなったが、よい社会勉強にもなった。



しかし。




今、マスターに呼ばれていた私は、教会での勤務を終え向かったクラブで、「ホスト」という職業への転職を勧められている。


神官である私が、夜に酒を作るだけでも躊躇われたが、
私に髪型やスーツの着こなし、香水の付け方などのバーテンの仕事を教えてくれた先輩が怪我をし、どうしてもその穴を埋めないといけないらしい。

「お前は特別、身元も聞かないで雇ってやっているんだ。頼む、あいつの怪我が治るまででいいんだ!」
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