物語1

□『私の大事な旦那さま』
1ページ/2ページ

『私の大事な旦那さま』



いつも、帰りの遅いあなた。
そんなあなたを、どうして私が寝たフリをして、待っているかわかる?



だって、あなたがいつも。

眠る(フリの)私にキスをして、「ただいま」って言う。

その時点でもう、私はあなたに「おかえりなさい!」って飛び付きたいのだけど、


あなたはいつも。

私の冷えた足を撫でて、暖めてくれる。

私の足の裏を揉んで、特に、私が風邪気味のときなんか。
親指の外側の、鼻の反射区を押して、「早く治りますように」って言ってくれる。

一番の、私のお薬。


この時点でも、私はあなたに「ありがとう!」ってお返しに肩でも揉んであげたいのだけど、


あなたはいつも。


眠る(フリの)私の顔を見て、
「かわいいなあ。」
とか、
「こんなに素晴らしい人と結婚できて、幸せだなあ。」
とか、
「愛しています。」
って、言ってくれる。


この時点でも、私はあなたに「あなたも素敵よ!」とか、「私もあなたが大好きよ!」とか言いたいのだけど、


あなたはいつも。


眠る(フリの)私にもう一度キスをして、手を繋いでから眠る。


私は、そんなあなたが愛しくて。

あなたが寝息をたて始めると、

今度は私があなたにキスをする。


まるで子供みたいな、あなたの寝顔。

「愛しくて、仕方ないわ。」

そう言って、私はあなたの頬に触れる。

ちょっと荒れているから、私のお気に入りのクリームをつけてあげる。


「旅の間、同じ日焼け止めを使ってたね。まさか、あなたが私の日焼け止めまで持って来てくれるなんて・・・。つくづく、あなたって優しいわ。」
「あなたは『わ、私は結構です!』なんて言ってたけど、城で働いていたあなたの肌も陽に焼けて、ヒリヒリして痛そうだったから。私が塗ってあげると、おとなしく目なんかつぶっちゃって・・・。」

「今も、あなたは目をつぶっているから気付いていないんでしょ?私があなたを、どんなに愛しているか・・・。」

「あなたと結婚できて、本当に良かった。私、すごく幸せよ。ありがとう、クリフト・・・。」

私はまた、元通りにクリフトと手を繋いで瞼を閉じる。


「おやすみなさい、クリフト・・・。」



(・・・おやすみなさい、アリーナ)




    
        おわり
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ