物語1
□アリーナの悲しみ クリフトの悲しみ
1ページ/4ページ
「お、お父さま・・・どこなの?どうして、だれもいないの?」
「城全体が神隠しにあったようですね・・・。」
「サントハイムに、何が起ったというのじゃ・・・。」
エンドールの武術大会で優勝したときの、高揚した気持ちはすっかり消え失せていた。
どうして、どうして・・・。
疑問と不安だけが頭の中を駆け巡る。
サントハイムの異変を伝えに来た城の兵士の様子から、何かただならぬことが起ったであろうことは予想される。
しかし、城には何の痕跡もない。
あんなに会いたかった、お父様はどこ?
どうして、どうして・・・。
アリーナは混乱しながらも、城の隅々まで手がかりを探す。
クリフトとブライも必死で後を追うが、徐々に落胆し、血の気のひいていくアリーナを見ているのが忍びなかった。
絶望している三人の前に、一匹の白い猫が現れた。
「・・・ミーちゃん。ミーちゃんなの?」
ミーちゃんと呼ばれた猫は、アリーナをみると駆け寄って甘えた。
いつもは、呼んでも振り向くだけで人に甘えることなんてなかったのに・・・。
よほど怖い目にあったのだろう。アリーナはその猫を抱きしめ、号泣した。
「ごめんね、ごめんね・・・!!今まで一人ぼっちにさせてしまって・・・!」
私が城を離れたから。
私がわがままを言ったから。
だから、こんな目に・・・。
クリフトもブライも、アリーナにかける言葉がなかった。
気の済むまで泣かせてやろうと、見守っていたそのとき
一匹のスライムが現れた。
「・・・おのれ、魔物!!お前たちの仕業なのね、許さないわ!!」
「ち、ちがうよ!ぼく悪いスライムじゃないよ!」
「!!」
人の言葉を話すスライムに、クリフトとブライはただ驚いたがアリーナは違った。
憎しみの感情をむき出しに、スライムに飛び掛かる。
「姫さま、おやめください!」
クリフトはアリーナの前に立ちはだかるが、アリーナは耳を貸そうともしない。
「姫さま、たとえスライムでも・・・、このような無抵抗の者に力を振るってはなりません!」