物語1

□クリフトと父
1ページ/8ページ

まさか、あの方と、この国で会うなんて・・・。

一目でわかった、あの方が「アリーナ様」だと。

亡くなられた、お妃様と瓜二つ・・・しかし、あの行動力は、お父上譲りか。


私は、ひどく動揺したが、それ以上に彼女の方が動揺していた。

この国に入るなり、城へ一目散に・・・、
私は畑で見ていたのだが、なにか私に用があるのだろう。
案の定、大臣から私の居場所を聞いた彼女は、私の元へ駆け寄り、

「あの!ソレッタの王様!!私は、サントハイムの第一王女、アリーナと申します!」
「王様!どうか、パテキアを私に・・・!クリフト・・・、私の大事な人が、ミントスで病に臥せっているのです!!」


・・・ク、クリフトが!?
叫びそうになるのを必死でこらえ、
また、なぜクリフトとアリーナ様がこの地にきているのか、
そして、今、なぜクリフトのことを「大事な人」と・・・。

聞きたいことは山のようにあったが、彼女は急を要している。事実を伝えねば。

「パテキアは昔、旱魃にあい絶滅してしまったのです。」
「先々代の王が、もしもの時のために洞窟に種を隠しましたが、最近は魔物が強くなって近寄れないのです。」


・・・私が取りに行かせないのもあるが。
強い力は大きな災いをもたらす。
パテキアなくとも、身の丈にあった暮らしで十分だ。今まで何度も、パテキアを求めにくる者はいた。
何度も、「それも天命です」と諦めさせた・・・。

しかし、自分の子供となると違うらしい。

負い目があるからか・・・私は、彼女に種の在処を教えてしまった。

風の噂に、彼女は武術大会で優勝したと聞く。
しかし、今はお一人で洞窟に向かわれた。・・・お一人で、あの洞窟に向かわせるなど・・・。

私は、かつての忠誠心から、彼女に気付かれぬようお供のもの達をつけさせた。

そして、一刻も早く洞窟から戻られますように。
クリフトの元へ駆け出したいのを必死でこらえ、私は神に祈った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ