物語1

□クリフトと父
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何度も何度も土を耕し、空気を入れ、肥料を入れ、ミミズを這わせ・・・

いつ、アリーナ様やブライ様が、種を持ちかえられても良いように・・・。

大臣や民に、「ついに気でも狂ったか」と言われていたが、私は気にすることなく土を耕す。


堪り兼ねた大臣が、「今更パテキアを育てても、王妃は戻られませんぞ」と言った。
私は、はっとして大臣の顔を見たが、その顔に許しの眼差しをみると、手を止めなかった。


・・・王妃、それは、
この国の唯一の後継者で、私の二番目の妻・・・。


彼女は、政略結婚をサントハイムの王に求めに来た際、
なんと私を一目で好いてくれたらしい。

そのことを知った先代の王が、
・・・どの親も自分の子供が可愛いらしい。
「王子が駄目なら次の神父長になる男を渡さぬと戦争になる」と、
私を指名してきた。

私には、妻も子供もいたが・・・。
当時のソレッタは、パテキアを旱魃で絶滅させ力を無くしたとはいえ、相当な軍事国家だった。

無駄な血が流れる・・・。そうは思ったが、私には妻子の側を離れるなど考えられなかった。
王子・・・、アリーナ様のお父上も私の気持ちを汲んで、周りを説得してくださったり、戦争に向けての準備をしてくださっていた。


しかし、それを、マリアが許さなかった。

自分たちが我慢することで、無駄な血が流れないのであれば・・・。
普段は、・・・失礼ながら全く聖職者らしからぬ彼女だったが、
涙も見せずに、私に離縁状を差し出した。
その顔は神々しくもあり、まさに神の使いだった。


私は、腑甲斐なくも、マリアの前で泣き崩れ、何とか思いとどまってくれるよう、・・・いっそこの国から逃亡しようとまで言い、懇願した。

しかし、マリアは、受け入れてはくれなかった。

側に居れずとも、二人の間にはクリフトがいること、それだけで十分だと言った。
マリアは、クリフトと二人の生活になってもシスターの職があるから食べていける、自分は魅力的でモテるからすぐに新しい夫がみつかる、
そう笑いながら矢継ぎ早に言うのだが、
私には、それが彼女の優しさだとすぐにわった。

私は、マリアを抱きしめ、その口を口付けで封じる。すると、マリアの押さえきれない感情は、言葉から涙に変わり頬を伝った。

・・・離れられるわけがないのだ。
私たちは、こんなに愛し合っている。
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