物語1
□初夢
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それは、彼が、絶対に自分を傷つけることはしないであろうという信頼や、安心感がクリフトにはあるからだ。
旅をして、アリーナはほんの少しではあるが、男というものがわかってきた。
気やすく自分に触れようとしてきたり(もちろんクリフトによって回避されたが)、恋人同士のような男女が宿の部屋の前でイチャイチャと触り合うのをみた。
あんなこと、クリフトは絶対しない。
今だって、こんなゆでダコみたいな顔をしながら目をつぶって、固まっているだけだ。
神官という職業だからだろうか、
それとも・・・。
やっぱり自分のことは、なんとも思っていないのだろうか。
自分には、「姫様」という肩書きだけで、女の子としての魅力はないのか・・・。
アリーナは、いまだ目をつぶったままのクリフトを、試したくなった。
クリフトに近づく。
クリフトの胸に、そっと頬を寄せる。
「!!」
ドキドキドキドキ・・・。
クリフトの心臓の音が聞こえる。
ああ、クリフトは生きているんだ。
生きて、私の側にいてくれるんだ。
そう思うと嬉しくなって、つい、涙がでてしまった。
「!!姫様、どうされたのです。も、申し訳ございません、私がこんな失礼を・・・。」
クリフトは一気に青ざめて、おろおろしている。
本当に忙しいひとね。見ていて飽きないわ。
「違うの、うれしいの。クリフトとこうしていることが・・・。」
「姫様・・・!」
了解、とも取れる発言に、クリフトは思わずアリーナを抱き締めた。
「!!」
アリーナは驚いた。まさか、クリフトがこんなことをするなんて。
しかし、不快ではなかった。むしろ、嬉しかった。
男の人に、ベッドで抱きしめられるなんて想像するだけでも破廉恥極まりないが、
クリフトにされると、気持ちがよかった。
アリーナもつい、クリフトの首に腕を回しそうになった、その時・・・
「おっ、お前たち!何をやっておるのじゃー!!」
「!!ぶ、ブライ様・・・!」
「こ、これは、その、『クリフトの夢』をみるためなの!」
「このたわけが、何を姫様に吹き込んだのじゃ!二人とも、そこに直れ!!」
そうして、ブライの長いお説教で夜が明け、
「・・・初夢、見られなかったじゃない。」
「姫様、1日に関わらず、今年初めて見た夢が初夢なのです。」
「そうなの!ではまた、今夜・・・。」
「!!・・・はい。」
おわり