物語1
□二人の結婚
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「王様、私は、姫様と・・・。」
私は、決心して、すうっと息を吸い一気に、何度も頭の中で繰り返していた言葉を、初めて声にする。
「私は、姫様と一緒になりたいのです。・・・従者の身分で、なんども諦めようとしましたが、諦められませんでした。」
「先の旅で、世界中をみて、私は様々なことを学びました。」
「私は、姫様、アリーナ様を世の中の誰よりも愛しております。生涯変わらぬ愛を誓います。」
「今後も、アリーナ様のお役に立てるよう、王様や国の役に立てるよう、努力致します。精進し続けます。」
「ですからどうか、私とアリーナ様の結婚をお許しください。」
そう言い切って、クリフトは王の前に跪き言葉を待った。
・・・長い沈黙だった。
見兼ねたアリーナもクリフトの横にならび、父に懇願した。
「お父様!私も、クリフトと同じ気持ちなの!」
「クリフトは旅の途中ずっと私を支えて助けてくれて・・・。いいえ、旅の間だけではないわ、出会ったときからずっと、ずっと傍にいて、」
「私の母となり、兄となり、弟となり、友人となり、恋人となり・・・」
「一の家臣だったけど、その役割は多岐にわたり、神官、教師、薬剤師、医師、法律家、騎士・・・。たくさんの役割をこなしてくれていたの。」
「それは、私を愛してくれていたから、努力してくれていたのよ。こんなに私を愛してくれて、私も尊敬できる男の人は、クリフトしかいないわ。」
「だからどうか、お父様。私とクリフトの結婚を許してください。」
二人で王に頭を垂れ、懇願する。
それでも、王からの返事はなかった。
思わず二人が顔をあげると、
王は泣いていた。
「お、お父様・・・。」
「・・・すまぬ。わしは、一人の父親として、こんなに嬉しいことはない。」
「しかし、一国の王として、簡単にお前たちの結婚を認めるわけにはいかないのだ。」
「!!」
・・・二人は、王の答えに身を固くした。
当然といえば当然だが、この王なら、この父なら、理解してくれると期待もしていた。
「お前たちにはまだ理解できぬ闇が、この国や世界にはある。」
「それを円滑にするのが王家の務め。外交であったり、・・・政略結婚であったり。」
「アリーナ、お前には多数の縁談が持ち込まれている。クリフト、お前には、派遣の要請も。」
「その、国の利益を越える結婚をお前たちはできるか?」