物語1
□二人の結婚
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二人には、ただ押し黙るしか出来なかった。
旅から帰ってきて約一年。今はお互いに公務に追われ、神官としての仕事に追われ、
少しずつではあるが、色々なことがわかり始めていた。
「その国益を越える結婚」・・・。
確かに、「導かれしものたち」の一人であったクリフトを他国に派遣することは、サントハイムにとって外交のカードの一枚にはなるだろう。
そして、何より、政略結婚には二つの国を強固に結び付ける国益がある。
リックとモニカだって、様々な障害があったものの今やあの二つの国の結束は固い。
それは、リックとモニカが「王子」と「姫」であったから・・・。
ここにきて、やはり身分の壁は越えられないのか。
クリフトは拳を握りしめながら、その痛みに耐えていた。
アリーナの顔は青ざめ、ただクリフトと父親の顔を交互に見ていた。
一体どうすれば・・・。
長い沈黙を、王が破った。
「思いつかぬのか。・・・その程度か。」
「!!いいえ、違います。私の姫様を想う気持ちは、誰にも負けません!」
「私は、どうしても姫様を諦める事はできません。・・・しばしの猶予を下さい、王様。」
そういうと、クリフトはくるりと踵を返し部屋を出た。
「お父様・・・。ひどいわ。お父様ならきっと、わかってくれると思ってた・・・。」
アリーナは目に涙を溜め、これが父を見る最後であるかのように、切なそうに王を見た。
「アリーナ、待て・・・!」
「さようなら、お父様!!」
アリーナも王に背を向けると、急いでクリフトの後を追う。
待って、クリフト!
私は、それでも、どうしても・・・!!
部屋の扉の側で、クリフトはアリーナを待っていた。
アリーナが駆け寄ってくるのを見ると、思わず
・・・ここがサントハイムの城内であるにも関わらず
アリーナをぎゅっと抱き締めた。
アリーナも、クリフトの首に腕を回し、しがみつきながら泣きじゃくる。
それを見てしまった城のもの達は、はっと息を呑んだが、二人を咎めることは出来なかった。
小さな頃から一緒にいた二人の気持ちに、周りが気付かぬはずもなかった。
ついに、この時がやってきてしまったか。
皆、目を逸らし、二人を気遣うようにその場を離れた。
一体どうすれば・・・。