物語1

□片思いのクリスマス
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・・・こんなに長い旅になるとは思っていなかった。
ほんの、何日間か、姫様がサントハイム領を見て回るだけ・・・。
それが、今やサントハイムが突然の神隠しにあい、私達は情報集めの為、さらに各地を回っている。

ブライ様がどこからか資金を調達し、旅を続けているのだが、ブライ様だけに苦労をかけるわけにいかない。
私も教会で働かせてもらったり、仕事がないときは薬草を煎じて売ったり、・・・お二人には内緒だが色々な店で働いたり、力仕事をしたりしていた。

姫様に、ひもじい思いなどさせられない。

もっとも、寂しい思いもさせられないので、お二人に内緒の仕事は深夜、お二人が寝付いてからそっと抜け出すのだった。


「・・・ここでも、たいした情報なかったね。」

もはや、この言葉は姫様の口癖になっていた。

寂しそうなお顔を、見ているのが辛い。
ブライ様も、掛ける言葉も尽きたようでうなだれている。

この話題を出すのはためらわれたが、もう他に言葉がなかった。

「姫様。今日はクリスマスです。サントハイムでは、お祈りを捧げる日でしたが、この町ではどうやら違うみたいなのです。」
「・・・どう違うの?」

少しばかり、姫様が私の話にのってくださったので、私は張り切って話しだす。
「先ほど教会に来ていた子供がお祈りしていったのですが、それによると、今日は『サンタクロース』という者が、ひとつだけ願いを叶えてくれるそうなのです。」
「!!本当なの?それは・・・。ああ、でも子供のいうことだもの・・・。」

私は、姫様の願いが痛いほどわかっていたが、続けた。

「いいえ、姫様。その小さな子供は、『去年のプレゼント、とってもうれしかったです』と言ったのです。ですから、毎年叶えられているのでしょう。」 

クリフトは、その子供の祈りを陰でこっそり聞いている両親がいて、欲しいものを聞くと急いで買い出しにいくことは伝えなかった。

私は、姫様に何もしてあげられないけれど、せめてあの両親のようになりたい。
姫様が教会で、何かサンタクロースにお願いをしたら。
サントハイムの皆が戻ってほしいという願いは叶えられなくても。
なんでもいい、何か他に、私にしてあげられることはないか。
何か姫様にプレゼントできないか・・・。

「ですから姫様も、なにかプレゼントをお願いされてはいかがでしょうか?」
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