物語1

□片思いのクリスマス
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「・・・うーん。欲しいものって、何も・・・。」

「姫様も、年頃の女の子じゃ。何か、身を飾るものはどうじゃ?今年はクロスのネックレスが流行っているそうですぞ。」
ブライ様も、気持ちは同じなのだろう。なんとかして姫様を喜ばせたいのだ。

時折、宝石店で商品を眺めるブライ様と鉢合わせすることがある。その度お互い赤面し、知らんぷりをして店を出るのだが。

「うーん。まあ、いってみるわ。」

「お供致します。」
「わしも参りますぞ。」

声も重なってしまい、少し、姫様が笑って下さった。
「じゃあ、みんなでお願いしましょ!」
「あっ、その、姫様・・・。願いは一人ずつ、声に出して言わなければならないのです。姫様がお願いされている間、私達は控えております。」

そうしないと、プレゼントを買いにいけないじゃないか。神父様には話をつけており、姫様の願いが聞こえる場所で控えることになっている。


「ふぅん。わかったわ。」
そして、私たちは教会に向かった。
姫様を祭壇に促し、私とブライ様はこっそり控える。
「・・・神様。いいえ、サンタクロースさん。今日は何か一つだけお願いを聞いて下さるって・・・。あれ?私のような異国の者の願いも聞いて下さるのかしら・・・。」
「うーん、とにかく、お聞きください。私の願いはただ一つ、サントハイムの皆が戻ってきてくれることだけです。」
「どうか、皆が無事でありますように。来年のクリスマスは、サントハイムで迎えることができますように。」
「あっ、クリフトは、何かプレゼントをお願いしなさいって言っていたんだわ。・・・でも、私、今何も欲しいものって、なくて。というより、クリフトやブライが全て用意してくれているから、私、不自由を感じないんだわ。」
「そのくせ、クリフトはどこでぶつけてきたのか服はボロボロ、靴も擦り切れて。ブライもしょっちゅう腰が痛いって言っているし。」
「だから、クリフトに新しい服と靴、ブライに湿布をプレゼントしてください。私は何もいりません。・・・これでいいのかしら?」

「次はクリフトに代わろうっと!クリフトー!!」


クリフトとブライは急いで涙を拭い、アリーナの元に駆け寄る。

「ひ、姫様。お祈りはお済みですか?」
「ええ。次はクリフトの番よ。」

「・・・私は結構です。祈りは心の中でもできますから。」
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