物語1
□テンペ
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クリフトに世話をしてもらって、身支度を整えたアリーナは、どこか気持ちが明るくなるのを感じながらテンペへと向かっていた。
(女の子なんだし、身だしなみを整えるって大切なんだわ。さっきからクリフトも、心なしかニコニコしてみてくれてる気がするし。私も1人でお風呂に入れるようになったし、もうすこし、ちゃんとしてみようかしら)
アリーナは少しずつ、女性としての喜びに目覚めつつあった。
弾んだ気持ちの二人とは正反対に、ブライは一人浮かぬ顔をしていた。
(サランの神父の言葉・・・。気になる。取り越し苦労であればよいが)
テンペについたのは陽も落ちた頃だった。
アリーナは意気揚々と、
「宿をとって食事にしましょう!お腹ペコペコだわ」と宿屋を探したが、
二人はこの村の不穏な空気に周りを見回していた。
「どうしたの?早く宿にいって、お風呂でも・・・。」
「・・・姫様。なにかこの村は悲しみに満ちているような・・・。」
「サランの神父が言っておったのじゃ。実は・・・。」
そのとき、村の墓場から女性の啜り泣く声が聞こえた。
「!!どうしたのかしら。いってみましょう。」
駆け足で向かうアリーナをクリフトは追いながら叫んだ。
「姫様!!危険です、1人で離れてはなりません!」
(何があったのじゃ。テンペの情報が何も入ってこなかった理由がわかるかもしれぬが・・・。よりによって、姫様と一緒のときに・・・)
ブライは顔をしかめながら二人を追った。国から赴任しているはずの者は何をやっているのだ。
「・・・・・早く、立ち去りなさい。」
啜り泣いていた女性は、三人を見るなり言った。
「この村は、呪われているの。悪魔が住み着いて、村の若い女を生け贄にしろと・・・。」
「・・・私の可愛い娘も、生け贄に・・・!あなたくらいの年頃だったわ。人生で一番楽しいときに、なんでこんな目に・・・。」
「あなたは、この村と関わってはいけないわ。あなたにも、母親がいるでしょうに。心配させてはいけない、早く・・・・・でていきなさい。」
そして、女性は墓の前に泣きくずれた。
「な、なんですって!?ブライ、このことは国に報告があったの!?」
「・・・いいえ、わしも知りませんでした。」
身分を隠すため、少し小言で話し合うが、アリーナは殺気立っていた。
「私の国で、こんなことがあるなんて!」