物語1

□アリーナの望み
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「ひ、姫様・・・。」
がっくりとうなだれるクリフト。
それがマーニャの母性本能をくすぐった。
「よしよし。ごめんね、悪いことしちゃったわね。」「子供扱いはやめてください。・・・でも、姫様があんなふうに思っていたなんて。聞けて良かったです。」「そうねぇ、女心は難しいからね。でも、あんたは今まで、アリーナのこと、わかってるつもりだったんでしょ?」
「はい・・・。一の家臣として、小さいときから誰よりも側におりましたし・・・。姫様の好きなものや嫌いなもの、そういうことはわかっていて、尽くしてきたつもりでした。まさか、私の態度がお嫌だったなんて・・・。」
「いやー、あんたのその態度の全てが嫌いなわけじゃないと思うよ。だったらあんただけに、あんな笑顔みせたりしないもの。」
「そうでしょうか・・・。ああ、私は一体どうすれば・・・。」
「難しいわよね。ただでさえ男と女なんて難しいのに、あんたたちにはさらに身分の差まであるんだし。」「はい・・・。」

「でもね、私も、身分ほどじゃないけど、お互いの立場ってものを考えないでもないのよ。・・・ほら、ライアンって王宮勤めのお堅いやつでしょ。でも、私は踊り子。価値観の違いとか、世間体とか、私も考えるわ。」
「!!そ、そうだったんですか・・・(いつの間にそんな仲に!)。」

「でも、私はライアンを嫌いにならない。ライアンもそうだと信じているわ。私たちは、お互いをわかり合おうとしてるし、相手のしてほしいことをしようと心がけてるもの。」
「相手の、してほしいことですか?」

「そうよ。若いときはついつい、相手の気持ちより、自分で精一杯で、自分がしてあげたいことばかりしちゃうのよね。それが噛み合えばいいけど、いつもそうとは限らない。」
「は、はぁ・・・。」

「クリフトも、姫様のために!って頑張ってるのは、すごく素敵なことよ。でも、それがあの子の望むことばかりじゃない・・・。うーん、難しいんだけど、女って、欲張りなのよね。」
「そ、そうなんですか・・・。」

「アリーナじゃないから良くわからないけど、アリーナは、そのままのあんたでいながら、もう一歩踏み込んでほしいんじゃない?」「一歩踏み込む・・・。しかし、私には、家臣という立場が・・・。」
「そこは、二人で乗り越えるしかないんじゃない?」「はぁ・・・。」

「もう、煮え切らないわね!アリーナはね、あんたにキスしてほしいのよ!!」「!!き、キス!?」
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