物語1

□初めてのキャンプ
1ページ/2ページ

「・・・眠いわ。」

勇んで城を飛び出しては来たものの、
今まで朝早く起き、夜早く寝るという健康的な生活を繰り返してきたアリーナには、もう眠い時間だった。加えて初めての実戦。

夜は魔物も増え、強くなる。サランまではもう少しだが、大事を取ってテントを張ることにした。

クリフトは手際良く2つ目のテントを張ろうとしたが、
「もう眠いからひとつでいい、みんなで一緒に寝ましょう。」
「!!な、何をおっしゃいます。姫様と同じテントでなど・・・。」
「中にシーツで仕切ればいいでしょ。じゃあ、もう寝るわね。おやすみなさい。」
「わしも先に眠らせてもらうぞ。早朝、見張りをかわろう。」


・・・・・。
クリフトは、一人薪の前で祈りを捧げていた。
初めての戦闘で、魔物といえど命を奪ってしまったこと。
それと引き替え、無事である姫様と自分達のこと。
この旅が終わるまで、何があっても姫様を守りぬくこと。
神のご加護がありますように・・・。

祈りに集中しながらも、頭の片隅では、テントの中のアリーナが気になって仕方ない。
今、あそこで、どんな姿で、どんな寝顔をされているのだろう。


「・・・それにしても。」
クリフトは自分の思考を変えるため、わざと声に出してつぶやく。

「ぐぉーっ、ぐぉーっ、ふぐっ・・・んがっ、ががっ、うぐぐっ」

ブライのいびきは凄かった。
この中で姫様は、眠れているのだろうか?


「・・・ブライうるさくて寝れないー。」
アリーナが毛布を引きずって、目をこすりながらでてきた。
「本当ですね。お疲れになったのでしょう。今、もうひとつテントを・・・。」
「いいの。」

そういって、クリフトの膝のうえに座り、胸に寄りかかる。

「!!ひっ、姫様!あ、あのっ、そのっ!」
あまりの動揺で言葉もでないクリフトをうるさそうに見ながら、
「床が固くて、痛くて眠りづらいの。これなら、まだ柔らかいわ・・・。」
目をつぶりながら、事もなげにアリーナは答える。
「し、しかし、ブライ様が起きたら・・・。」
「私が命令したっていうから大丈夫よ。それより、寒い・・・。」
「は、はい。」
クリフトは、アリーナを毛布で包み、さらに上から自分の毛布をかけてやった。「クリフトは寒くないの?」
少し目を開けて、アリーナはクリフトをみた。
「私は大丈夫です。」
さっきからのぼせ上がって、暑いくらいだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ