物語1

□アリーナと雷
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「どうして!?いつも元気でそんなこと感じさせないアリーナがっ・・・。」

「・・・。アリーナ様のお母上じゃ。王妃は、心臓発作を起こして亡くなった。そのとき、外では雷が・・・。」
「突然のことじゃった、小さな姫さまの中で、雷の光と母上の苦痛に歪む顔が重なったのじゃろう。」
「あの時は、城中がパニックだった。王も、ワシも・・・。すぐさま王妃に治療が開始されたが、混乱したアリーナ様をそばに置いておくことはできなかった。王は王妃に付き添い、姫さまはクリフトに預けた。」
「クリフトは、自分も母親を亡くしていたから、姫さまの気持ちがよくわかった。どんなふうに労ればよいか、自分がどうしてほしかったか。雷の中、王妃が治療の甲斐無く息を引き取るまで、姫さまとクリフトは共にいた。」
「その後も、姫さまは雷をみると、パニックを起こすようになった。それを押さえる薬も飲ませたが、そうすると、もとの元気な姫さまでなくなり、目は生気を失せ・・・。しかし、クリフトを側におくと、なんとか乗り切れるのだ。」
「王は、薬を飲ますことより、それを選んだ。お互いが年頃になっても、あの姫さまをみてはいられなかったし、王自身も思い出すのじゃろう。姫さまのお気持ちが良くわかるのじゃ。」
「少しずつ、慣れてはきているが、お前たちも、あの姫さまをみても、つられて動揺したり、回復を焦らせたりしないで、落ち着いて対応して欲しい。・・・もっとも、対応するのはクリフトじゃが。だから、そっとしておいてやってくだされ。頼む。」
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