物語1

□ピアノの発表会(幼少期設定)
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クリフトは、アリーナをピアノの前に座らせると、王や主賓客達にむかって深々と礼をした。

「お待たせして、申し訳ございませんでした。そして、僕のようなものが、この場にいることをお許しください。」

アリーナが、「私が頼んだの!」と庇おうとするのを優しく制し、クリフトは続けた。

「私は、身分はありませんが、アリーナ姫様の一の家臣です。そして、自分で言うのもなんですが、サントハイムきっての神童です。」
茶目っ気のある笑顔で、クリフトが笑いをさそう。
王と、理解ある大人たちが、笑い声で応える。

「僕は、今、神官を目指していますが、今日皆様に聴いて頂きますからには、将来立派な音楽家にもなります!あの時の子供が、と皆様に思っていただけるように。どうか、今しばらくの間、お許しください。」

そう言ってまた、深々とお辞儀をすると、たくさんの笑みと拍手がかえってきた。

クリフトとアリーナは顔を見合せ、ほっとため息をつくと、息をあわせて連弾を始めた。

アリーナは一生懸命に、クリフトはアリーナに合わせるように。  
息のあった二人の演奏は、拙いながらも観客を引き込む。

演奏を終え、クリフトはアリーナの手を取り、二人でお辞儀をすると、割れんばかりの拍手喝采が聞こえてきた。

「おてんば姫ときいていましたが、素晴らしい演奏でしたな。このようなもてなし、感謝いたします。」
「本当に息の合った、素敵な演奏でした。」
「・・・あの男の子、将来絶対ハンサムになるわね。今のうちに、ブロマイド買っておこうかしら。」


王が二人を手招きした。
「よくやった、二人とも。アリーナが脱走したときはどうなることかと思ったが・・・。」
「だって、ひどいじゃない、お父様・・・。」
口を尖らせて文句を言い始めるアリーナを制し、王は続ける。
「クリフト、懐かしいものを持っているな。その勲章は、以前ブライに渡したものだ。アリーナも、早くクリフトに同じものを作ってやれ。今回のこともかねてな。」
「はい!お父様!!」
嬉しそうにアリーナは王に飛び付いた。
「もったいないお言葉・・・。ありがとうございます。そして出すぎた真似をお許しください。」
「いや、気にするな。お前はこれからも、繰り返すだろう。」
ワハハハ、と豪快に笑いながら王が囁く。

どっ、どういう意味だろう、まさか、----予知夢!?

事実今後クリフトは、発表会の度にアリーナと練習し、クリフトじゃないといや、と駄々をこねるアリーナのかわりにまたあの挨拶を繰り返す。それはダンスだったり、フラワーアレンジメントだったり・・・。

「君も大変だな、将来は神官に、音楽家に、ダンサーに、今度は花か!」
これも楽しみだ、とばかりに声がかかる。

クリフトは、赤面しながら、でも、姫様のご命令にはかえられない、と思うのだった。



         おわり
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