物語1

□ピアノの発表会(幼少期設定)
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「クリフトはどこなの!?」
ドレス姿を誉めてもらおうと、クリフトを探す。
クリフトも、タキシードでも着てくるのかしら?
そんな姿、みたことないから、笑っちゃうかも。

しかし、いつまでたってもクリフトは現れない。彼が遅刻するなんて、あり得ないのだ。
もうすぐ、発表会の時間だというのに・・・。

アリーナは、心配になってきた。ピアノ講師に、クリフトのことを聞く。

「それが、その・・・。クリフトは、参りません。今日は、貴族のご子息と連弾していただきます。」
「アリーナ姫様、今日はよろしくお願いします。」
当然、とばかりにアリーナの前に進み出て、手をとろうとするが、アリーナはそれを振り払う。
「どういうこと!?クリフトと私は練習してきたのよ!急に違う人と連弾なんてできないわ!」
「大丈夫です。僕の腕は確かですから。」

違う違う!私はクリフトと弾きたいの!クリフトじゃないと、私にうまくあわせてくれない。クリフトじゃないと、いやなの!


その頃、クリフトは教会の中庭にいた。
泣いてはいけない、はじめからわかっていたことじゃないか。
僕みたいな平民が、あの場に出れる訳がないのだ。
姫さまはピアノがご上達された、その事実だけで十分だ。
僕はこれからも姫さまを陰ながら・・・・・。

そう必死に考えていると、聞き慣れた足音が聞こえてくる。ま、まさか・・・。

「クリフトー!!」
「姫さま!!」

アリーナはクリフトの胸に飛び込んだ。
「いやよ!どうしてきてくれなかったの!?クリフトとじゃないと、私、弾かない!」
「姫さま・・・。申し訳ございません。でも、王様が悲しみます。姫さまも、せっかく練習されたのですから・・・。」
「じゃあ、一緒にきて!」「姫さま・・・。」

なんて言えばいいんだろう。僕だって、一緒に行きたい、でも行けないのだ。
しかし、なんとしても姫さまには戻っていただかなくては・・・。

「やはりここであったか。」
息を切らしながら、ブライが立っていた。
「姫、皆様を待たせております。今は、我が国の者だけではありません。王のためにも、戻っていただきますぞ。」

気持ちはわかるが、という顔で、ブライは優しく諭す。

「わかっているわ。でも、クリフトじゃないと、いや。上手く弾ける自信がないの。」
「しかし・・・。クリフトはあのような場には・・・。でられる身分ではないのです・・・。」

改めて人に、尊敬し、可愛がってくれたブライに言われると、くやしかった。かなしかった。どうして僕は・・・。どうしたら、そのふさわしい身分になれるのだろう。
「どうして!?みんなクリフトのこと、すごいっていってるじゃない!サントハイムきっての神童だって!お父様だって、よくクリフトのことを誉めているわ!なのに、なぜ・・・。」

「姫さま、僕は、姫さまのお気持ちだけで十分です。ここで、姫さまが上手く弾けるようにお祈りしていますから・・・。」
「いやよ!クリフトの努力はどうなるの?!みんなをびっくりさせるんでしょう?・・・命令よ!クリフト、一緒にいきましょう!」
普段、アリーナはクリフトに命令などしない。しかし、忠義心溢れるクリフトには、魔法のような言葉だった。

「・・・かしこまりました、姫さま。お供いたします。」
「ちょっとまてクリフト、その格好で行くのか?まあよい、これを貸してやる。これは昔、王がワシを一の家臣と認めてくれた時にくれた勲章じゃ。・・・姫さまも、早くこやつに作ってやって下され。」

そういって、金色に輝く王家の紋章が入った勲章を、クリフトの胸につけてくれた。

「ありがとうございます!!」
「ありがとうブライ!!」
二人の声が同時に重なる。「(息ぴったりじゃな・・・。)急ぐのじゃ!頑張ってな・・・。」

二人は会場に向かう。クリフトは、服こそいつもの神学制服だが、貴族にも負けぬ堂々たる気品と、胸に光る勲章のおかげで会場に入ることができた。

そして、アリーナをエスコートしながらピアノに向かう。

会場からは、どよめきがおきるが、二人は気にしなかった。
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