物語1

□パラレル設定
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「クリフト〜!」

愛しいあの人の声が聞こえる。
心臓がドキドキする。
なんとか冷静を保とうと、軽く深呼吸し、落ち着いた笑みを作って彼女に振り向く。


「はい、なんでしょうか?アリーナお嬢様。」


「もう、お嬢様はやめてって言ってるのに。明日から高校生よ!お父様が同じクラスにしてくれたみたいだけど・・・。ドキドキするわ。」


僕は、特待生として、明日から聖サントハイム学園の高等部に通う。
うちは母子家庭で、しかも母は病弱、普通ならこんな私立校に通えるわけはないのだが、
学園長である、アリーナお嬢様のお父上が僕を見込んでくださり、通わせて頂くことになった。
しかも・・・。
 

「でも、一緒に住めるようになってうれしいわ。クリフト、お母様と離れて暮らすことになって、さみしくない?」


そうなのだ。
僕は、アリーナお嬢様のお屋敷に、「ご学友」として住まわせていただけることになった。
学園が終わった後も、お嬢様とお勉強や、習い事を一緒にして過ごす。
母は、お父上の好意で療養所にて静養できるようになった。

期待に添えるよう、がんばらなくては・・・。


「ねぇ・・・ねぇ?クリフトったら、また妄想してるの?いっつも私の話なんかきいてないんだから。」

ぷん!とふくれるお嬢様。か、かわいすぎる・・・。その、頬から顎にかけての丸みのあるライン、目に焼き付けて・・・おっと!いけない!
なんとかご機嫌をとらなくては!

「え、えっと、あ、母の話ですね。僕は、お父上に心から感謝しております。あのような立派な療養所に入れていただけて・・・。僕は、特待生として学園に通わせていただけるのですから、必死に努力して・・・。」
「クリフトのお話、長いわ。」

グサッ!!お嬢様に自分を否定されるお言葉を言われると、なぜか妙に心に刄となって突き刺さる。僕はそれをひそかに、会心の一撃とよんでいる。

「す、すみません・・・。」
おろおろと、謝るのがやっとだ。

「ね!今から、町に行って、女子高生がはいてるっていうルーズソックスを買いに行きたいの!爺はダメっていうけど、私だけはいてなかったら嫌だもの。付き合って!」
「えっ、二人で、買い物?!(でっ、デート!?でも、どこに行くんだろう・・・。僕は、母さんとダイ○ーくらいにしか・・・)」

「はい!これは、私からの入学祝い!クリフト、あんまりお洋服持ってなかったでしょう?」

そういって渡されたのは、部屋の鍵・・・?

「クリフトのお部屋の横に、衣裳部屋があるから!そこにいるメイドに、今日の服は指定してあるから、それを着てね。じゃ、私も支度してくる!」


え・・・?衣裳部屋?

いってみると、どこかのブティックのような部屋にメイドがいて、

「お待ちしておりました、クリフト様。お嬢様から今日のお召し物は仰せつかっております。」
「は、はい、すいません・・・。」


見ると、僕の知らない、ブランドのものであろうジーンズと、Tシャツ、チェックのネルシャツ、まだ肌寒いのでダッフルコートが手渡された。
一体いくらするんだろう・・・。僕の持ってるユニ○ロのと、何が違うんだろう・・・。それすらわからない。 
やっぱり、お嬢様とは、住む世界が違う・・・。

そうぼんやり考えながら、服に袖を通していると・・・。

「クリフトー!用意できた?」

お嬢様が、着替え室のカーテンを開けて入ってきた!!

「うわーっ!お嬢様!でていってください!!」
「えっ、どうして?中学部では、みんなで着替えて・・・。ああ、そっか、女の子しかいなかったものね・・・。」

・・・なに?聖サントハイム学園は、女子校なのか?

「今年から特別、クリフトが入学することになったの。あ、あと、なんだか、学園を救う?勇者君というのが、うちの男子生徒になるみたい。クリフト、お友達になれるといいね!あーっ、やっぱり似合ってる!!」

え、えっと、僕は、特待生として学園に通うわけで。なんだその、学園を救う勇者というやつは。
僕だけが、お父上に見込まれたのではなかったのか?おのれ・・・負けられない!!

「ねぇ、クリフト〜、なんで怖い顔してるの?この服、いや?」
「はっ!まっまさか!アリーナお嬢様、このような立派なものを、ありがとうございます。」
「本当!?よかった!じゃあ、行きましょう!あ、街では、アリーナって呼んでね。」
「えっ、ええ〜!」

そうして僕は、引きずられるようにお嬢様に手を引かれ、リムジンに乗り込んだ。
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