物語1

□パラレル設定
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「おはよう、クリフト!わあ、制服似合うねっ!」

ブレザーにチェックのズボン、ワイシャツにしっかりネクタイをしめていると、お嬢様がいつものように部屋に入ってきた。

「(いやいや、お嬢様こそそのお姿、素敵です。あ、にやけてしまう、ダメだダメだ、)・・・お嬢様、本当に、特に着替えをしているときはノックをしていただきたいのですが・・・。」
「はいはい、わかってるって。クリフト、うちは校則きつくないから、そんなにきっちりネクタイしめなくても・・・。」
そう言って、僕のネクタイに手を掛け、ゆるめようとする・・・。う、うわぁ、新婚さんみたいじゃないか!思わず目をつぶって固まっていると・・・、

「ぐ、ぐふっ、お嬢様、逆です、苦しい・・・。」
「ごっ、ごめんクリフト!」
「・・・ゴホゴホ、い、いいんです・・・。」


「なんだ朝から、大丈夫か?」
「あっ、お父様、おはよう!」
「アリーナは最近朝一番にクリフトの部屋に行くからな、クリフトも大変だろう?」
お父上は笑みを浮かべ、アリーナお嬢様の頭をなでながら言う。
娘が可愛くて仕方がないんだろうなあ・・・。
そんな親子の様子を眩しく見つめながら、クリフトは答える。

「いえ、とんでもございません。お嬢様は私のようなものにもわけへだてなく接して下さり、今も学園のことを教えていただいていたのです。」
「・・・。クリフト、お前はそのように自分を卑下することはないぞ。とにかく、今日から高等部だ。クリフト、お前には期待しているぞ。それから・・・。」

そういって、クリフトの耳元に近づくと、
「できるだけアリーナのわがままを聞いてやってほしい。もう、わしでは叶えてやれないこともあるからな。爺はうるさいが、普通の若者のように街へ行ったり、遊んだり、楽しい時間を過ごさせてやってくれ。ただし、あまり無茶はするな。その点、お前なら安心している。」

ど、どういう意味だろう?やはり、お嬢様のお目付け役なのだろうか?
しかし、お世話になっている身、精一杯がんばろう!
「わかりました!及ばずながら、つとめさせていただきます!」

「なあに?なんの話?」
二人の会話を聞き取れなかったアリーナが、首をかしげて話に入ろうとしている。
「いや、クリフトには勉強を頑張ってもらうぞ。うちの学園から有名大学への進学者がでたら、ワシも鼻が高いからな。」
ワハハハ、と笑いながら去っていく父親の背中を見つめながら、アリーナは心配そうな眼差しをクリフトに向ける。
「クリフト、あのね。お父様がああやって高笑いするときは、もう、そうなるものだ!と決めてるときなの。きっと、これから、たくさん勉強させられるわ・・・。」
アリーナは自身の過去の、いやな思い出を振り返りながらつぶやく。
そんなアリーナを見ていられず、クリフトは明るく、
「大丈夫です!僕は、勉強が大好きですから。」



しかし、これからの生活が、学問だけでの勉強ではすまされないことをまだ、クリフトはわかっていなかった・・・。
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