物語1

□パラレル設定
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着いたのは、若者あふれる大都会で、なんだか気後れしてしまう。
しかし、お嬢様に変な男がよってこないよう、気を付けなければ。

「クリフト、絶対お嬢様って呼んだらダメだからね。あと、お父様から、出歩くときはクリフトと恋人同士みたいに歩くよう言われているの。変な虫がつかないように、だって。」

ええっ、こ、恋人同士!?
お父上、そこまで僕を見込んで・・・。
いやいや、もしかしたら、僕をお嬢様のお目付け役にしようと思ってらっしゃるのか?上手く使われてるだけだったりして・・・。

「だから、こうやって、腕を組んでもいい?」

お嬢様は、ほんのり頬を染めながら、上目遣いで僕をみている・・・。
か、かわいい・・・。
もう、お父上の思惑なんて気にしない!
目の前の、お嬢様のことだけ考えて、今の幸せを存分に味わおう!

「かしこまりました、お嬢様!及ばずながら、今日はこのクリフトが・・・。」
「だから、今日はお嬢様はやめてって!」
「あっ、あ、・・・アリーナ・・・。」
「うん!じゃあ、靴下やさんに行きましょう!あの女子高生がたくさんいる店がいいわ。」

そこは、信じられない丈のスカートを履き、みんな同じようにセーターを着て、お嬢様の欲しがるルーズソックスと呼ばれるものをはいた女子高生でごったがえしていた。

いやに視線を感じる・・・。確かに、こんなところ、僕のくるところじゃない。
でも、恥ずかしがっていたら、一緒にいるお嬢様まで変な目で見られてしまう。ここは、強気に、恋人のように・・・。

「どれがいい?アリーナ。」
「えっ、ええっと・・・。よくわからないわ。店員さんに、おすすめをきいてみようかしら。」
それを聞いて、店員を呼ぶ。
「おすすめは、どれですか?」
「今一番売れているのは、この丈のものです。」

えっ、靴下一足1300円!?五足1000円の間違いじゃないのか?

「そうなんだあ。じゃあ、100足くらいあればいいかしら?」

なっ、何を言っているんだ!そんなにいらないだろう!それに、100足買うと、13万円・・・。
僕は、もしも、将来お嬢様と結ばれた場合、お嬢様を養えるだろうか・・・。
無理だ・・・。
母のこともあり、医者を目指していたが、それでもとっても足りないと思う。

これは、教育するしか、ない。

「アリーナ、まずは一足買って、明日みんながどんな格好をしているか確認しよう。みんながこれを履いていたら、また買いにきたらいい。」
「ええーっ。・・・うん、まあ、そうね。使わなかったら、無駄だし・・・。」
「では、これは、僕からのプレゼントにさせてもらうよ。」
「あ、ありがとう、クリフト!」

うれしそうなお嬢様。
しかし、そうそう何度もプレゼントなんてしてあげられない。
内職を増やすか、バイトでもしようかな・・・。

「次は、何を見るー?」
「バイト情報誌をみたいので、本屋に行ってもいいですか?」
「いいなー!クリフト、バイトするの!?私もする!」
「いやいや、お嬢様はする必要ないでしょう・・・。」「えーっ、どうして?もう、またお嬢様って!」
「あっ、あ、・・・アリーナ。いや、もう帰りましょう。明日から学校ですし。」
ぶーぶー文句を言うお嬢様を制し、私達はリムジンに乗り込んだ。


そして、お屋敷に付き、僕は部屋で明日の準備をしていた。

「クリフト、あのね。」

お屋敷にきてから、何度となくこうしてお嬢様に部屋を勝手にあけられる。
最近では、足音で気付くようになってきたが、やはり、突然入ってこられると困るときもある。

「お嬢様、ぜひ、部屋に入る前にノックを・・・。」
「はいはい、爺みたいね。それより・・・。今日は、ありがとう・・・。」

少し、もじもじしながら、お嬢様が頬を染めて・・・。
「い、いえっ、僕も幸せでした!!」
「・・・え?」
「あ!いや、楽しかったです!」

何を言ってるんだ僕は・・・。
「・・・そう、よかったわ。それにしても、クリフト、やたら女の子に見られてたわね。明日からは、気を付けてね!」
「えっ(何の話だ?)、き、気を付けます(ど、どうやって?)。」
「じゃあ、また明日。おやすみなさい。」
「おやすみなさいませ、お嬢様。」


ああ、なんと、幸せな1日だっただろう。
お嬢様と、腕を組んで歩いた、
お嬢様を、アリーナと呼んだ、
そして、今、1日の終わりにこうして言葉をかわすことができる。
なんだか、神にも祈りたい気分だ。
お嬢様にふさわしい男になれるよう、頑張ろう。明日からは高校生活だ!


希望に燃える僕だった。
明日からの過酷な学園生活を予想などできるはずもなく・・・。
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