物語1

□神官クリフト2『大丈夫』
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私は晴れて神官となり、日夜仕事に励んでいた。


もうすぐ3ヶ月。
少しずつ仕事にも慣れてきたが、



まだまだ、だ。
目の前の事をこなす事で精一杯。

その時、しゃくりを上げながら私の服の裾を掴む小さな手に気付く。



「どうしたのですか?」

「ぼくのっ・・・、シロがっ、ぼくの、ペットのシロが・・・!!」



私は業務に追われながらも、
その男の子の目線まで腰を下げ、

笑顔でこう言った。




「きっと大丈夫ですよ。必ずシロは良くなるよ。」

「・・・本当に?」
「ええ、もちろん!」




私はこの時、自分の言葉になんの躊躇いもなかった。

むしろ、その男の子の泣き顔が笑顔に変わったことに、
誇らしい気持ちで・・・




だけど。



次の日、雨の降りしきる中。
その男の子がずぶ濡れになって、
顔を真っ赤にしながら私を怒鳴り付けた。




「・・・うそつきっ!お兄ちゃんのうそつき!!」
「えっ・・・。」


「お兄ちゃん、大丈夫って言ったじゃないか!!だけど、シロは・・・っ!」

「・・・・・!!」



私は言葉を失い、ただその男の子に謝罪するしか出来なかった。



「・・・すみません、本当に。・・・・・本当に、ごめんね。」



泣き顔のまま私を睨み駆けていく男の子の背中を見ながら、

私は深く後悔した。



・・・なんて軽はずみなことを、してしまったんだろう。

・・・その場しのぎだけで、あの子を救うことが出来なかった。




・・・どうすれば、良かったのだろう。



私は必死に、聖書を捲る。


何か、答えが書いていないか。



そんな私の手を止め、神父様が声を掛けて下さる。



「・・・クリフト。」
「・・・・・。」


私はその声の優しさに、今にも泣き出したいのを必死で堪える。



「・・・私達は万能ではありません。今回のように生死に関わることは、全て神様のお決めになること・・・。」


それはわかっている。私にはそれは、どうしようもない事。

だけど・・・。



「・・・それでは、私は。神官として、どう対応すれば良かったのでしょう。」


私は、初めて神父様に質問する。
今までは、ただ日々をこなす事で精一杯で、
何が自分は分からないのか、何を知りたいのかも分からなかった。



「・・・どうすれば、あの子の心は救われるのでしょう。」
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