物語1
□回復して・・・
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「姫様、これを・・・!」
ブライは、ソレッタから駆け付けたアリーナにパテキアを渡す。
アリーナは息を切らせながら頷き、
「・・・クリフト!」
クリフトに駆け寄る。
最早クリフトに意識はなく、ただうなされているだけ。
「・・・・・!!」
アリーナはとにかく、パテキアをクリフトの口に運ぶ。
しかし、何度飲ませても、クリフトは吐き出してしまう。
「クリフト・・・!」
皆が諦めかけたとき、アリーナは最後の一匙を自分の口に含むと、そのままクリフトの口に流し込んだ。
「・・・・・!!」
皆、固唾を飲んでクリフトを見る。
クリフトはゴクリ、とパテキアを飲み、
徐々に呼吸を落ち着かせる。
そして、静かに目を開けた。
「クリフト・・・!!」
クリフトは手を伸ばし、アリーナの名を呼びたいのだが、
また意識が遠退いて行く。しかし、目はアリーナだけを見て・・・。
「クリフト!!クリフト、しっかりして!!」
アリーナは混乱するが、ブライが戒める。
「姫様!!クリフトは大丈夫じゃ、呼吸も落ち着き、穏やかな顔をしておる。あとは眠っておれば回復するじゃろう。それよりも、この方々のおかげでパテキアを手に入れられたのじゃ。姫様からも、礼を言って下され。」
「そうだったの・・・!み、皆さん、・・・本当に。」
クリフトの様子に安堵したアリーナは、涙を堪えながら頭を下げる。
「・・・本当に、ありがとうございました・・・!おかげで、私達の大切な仲間が救われました。」
ブライと共に深々と礼をするアリーナに、勇者達は恐縮する。
「と、とんでもございませんです、はい!僕達は、当たり前のことをしただけですから・・・っ。」
「そ、そうよ。あ、あなたも疲れたでしょう。私達、あなたが洞窟で混乱してるの、見たのよ。先にパテキアを持ち帰ることを優先させたんだけど・・・。」
「ゆっくり休んで下さい。私も回復魔法が唱えられますから、いつでも呼んで下さいね。」
口々にまくし立てると、部屋を後にする。
「ふぅ・・・。な、なんだか、身なりはあんなだけど、やっぱお姫様なんだな。あんな風にお礼言われちゃうと、ドキドキするよな。」
「ま、まあね。だけど、残念ね。あの二人、出来てるわ。姫と従者の恋・・・。あのじいさんも必死に従者を助けようとしてたから、公認なのかしら?」
「・・・あの方々も、導かれし者ですね」