物語1

□回復して・・・
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もう二度と会うことはないのかもしれない。
だったらもっとちゃんと、お礼を言わなきゃいけなかったな・・・。


そんなことを思いながら湯からあがり、部屋に向かう途中、

「あらあなた、髪の毛濡れたままじゃない。乾かしてあげよっか?」
「!!」


さっきの、旅人の、クリフトの恩人だ!


「ほら、入った入った。」「え・・・。」

マーニャに強引に背中を押されながら、アリーナは困惑する。
いくらクリフトの恩人とはいえ、知らない人の部屋に入るなど。

・・・ブライやクリフトに怒られるだろうなあ・・・。

だけど。
ちゃんと、お礼言わなきゃ。


アリーナがマーニャに向き直り、礼を言おうとすると、

「いい髪なんだけど、ちょっと痛んでるわ。いつもどんな風に手入れしてるの?」
「えっ・・・。えーっと。」

いつも、手入れはクリフトがしてくれていた。
しかし、クリフトが倒れてからは、それどころではなかった。

答えに困っているアリーナに、マーニャは優しく微笑みながら、

「やっと恋人が助かったんだもの、飛び切り綺麗にしてあげるわ。」
「こ、恋人!?」

「あら、違うの?さっきの・・・。」
「だっ、だめ!お願い、クリフトには内緒にしてっ!」

「わ、わかったわ。」



マーニャとミネアは顔を見合わせ、アリーナを安心させるように頷いた。

「・・・ありがとう。」

下を向いたまま真っ赤になっているアリーナが、二人には可愛かった。

「これからも一緒に旅をするんだし、仲良くしましょうねっ。」

「・・・え?」


「姉さんっ、アリーナさんはまだ、疲れているのよ。早く髪を乾かして、従者の方々のところに帰してあげしょう。・・・ふふふ、『バギ』。」
「・・・そうね。ふふふ、『メラ』!」

「!!」


二人の攻撃魔法を聞いたアリーナは、一瞬身構えたが・・・、

「・・・あ、あれ?すごい。」 

二人の魔法は温風となって、瞬時にアリーナの髪を乾かした。

「でしょ!私たちが揃ってると、便利よ〜!今までどんなふうに乾かしていたの?」
「今までは・・・。」

クリフトがタオルでポンポンと髪をはさみながら、ブライがうちわで扇いでくれていた。

当たり前に思ってたけど・・・。
迷惑かけちゃってたな。
甘え過ぎだったな。


アリーナの顔が曇っていくのを慰めようと、

「大丈夫よ、これからは私たちが手入れしてあげるから!」

「・・・これから?」
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