物語1
□回復して・・・
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「ええっ!じゃあ、あの従者の人が完全に回復するまで、ミントスで待機だな・・・。」
「まだまだ疲れているでしょうし、この事を告げるのは・・・。」
「そうだよな。あのお姫様達がどんな人なのかもよくわかってないし・・・。従者と愛し合う高貴な姫と一緒に旅だなんて・・・。どうなんだろ?」
「いいなぁっ、私も出逢いが欲しい〜っ!ここで待機なら、久しぶりに飲み会でもしましょうよ!」
「これから仲間になる人が、病み上がりだっていうのに・・・。」
皆がそう、話している頃。
アリーナは、ずっとクリフトの手を握っていた。
熱は下がったみたいだけど・・・。
アリーナは、甲斐甲斐しくクリフトの汗を拭いてやったり、水を飲ませてやったりしている。
見兼ねたブライが、
「姫様。クリフトが落ち着いている間に、風呂に行って来なされ。顔にまで、土を付けて・・・。クリフトが目覚めた時、ガッカリしますぞ。」
「!!」
ブライの意味深な発言にアリーナは顔を赤くしながら、
「・・・さっきのこと、絶対クリフトには言わないでね。お風呂に行ってくる!」
そう叫んで、駆け出して行った。
ブライは「ふぅ、」とため息を一つつくと、
クリフトの頭を撫でてやった。
そして、そっと呟く。
「お前の父親にも、感謝するのだぞ。お前の為に、必死にパテキアを育てて・・・。」
「・・・・・っ、姫、さま・・・・・。」
「!!」
また、意識を取り戻したクリフトの手を取り、背中を撫でてやる。
「・・・すい、・・・ま、せん・・・。」
途切れ途切れに言うと、クリフトはまた眠りに落ちた。
「ふぅ・・・。」
言葉が出るようになってきた。
順調に回復している証だ。
それにしても。こんなときでも、口にするのはアリーナの事と、謝罪の言葉・・・。
「早く、良くなれよ。」
ブライは愛しそうにクリフトを見ながら、祈るように言った。
その頃、アリーナは・・・。
湯船に浸かりながら、今日のことを振り返っていた。
クリフトが助かったのは、本当に良かった・・・。
だけど、私・・・。
知らない人達の前で、クリフトに、あんな風に・・・!!
「!!」
アリーナは、思いを振り切るように、湯に潜る。
あの人達はクリフトの恩人だけど、もう二度と会うことはないだろう。
旅人みたいだったし・・・。