物語2

□Web拍手お礼のお話13
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☆ある日の二人13 ☆


『紅葉狩り』


「クリフト、どうして葉はこんなふうに、色を変えるの?」


はらり、はらりと舞散る紅葉の葉を二枚拾い上げると、アリーナはクリフトに訊ねる。

手には、真っ赤に色付いた葉と、まだ薄い緑を残した黄緑色の葉。


「朝晩の冷え込みが激しくなると、葉は変色し始めます。緑色の成分であるクロロフィルという化合物が・・・、・・・なんたら、・・・かんたら、・・・難しい話・・・。」

クリフトがここぞとばかり熱心に話すのをアリーナは慌てて遮りながら、

「わ、わかったわ。でもなぜ、同じ木から落ちた葉なのに、こうも色が違うの?これは紅、これは黄緑、・・・そして、これは茶色っぽくなって。」

アリーナは手にした二枚の葉と、足元に落ちている茶色になった葉を眺めた。


「赤色はアントシアニン、茶色はタンニンという成分によってそう見えるのです。・・・日の当たり具合や、『生物の多様性』で葉にもそれぞれ違いがあるのでしょう。」


「紅い葉のよく日に当たり元気いっぱいなのが姫様、黄緑の葉の運の悪いのがクリフト、茶色の葉がワシみたいじゃな。ワシは拾ってももらえん・・・。」

ブライが淋しそうに呟くと、


「そんな!!」
アリーナは急いで茶色の葉を拾う。


「どの葉も、木に養分を与えるために、一生懸命頑張った葉でしょう?」
「クリフトやブライも、サントハイムという木に一生懸命尽くしてくれているんだもの!私、この三枚の葉は大事に大事に取っておくわ。」


「・・・姫様!」
「・・・もったいないお言葉です!」



三人は手を取り合って、固い結束に涙を流しながら喜んだ。





「・・・・・おーい、サントハイム組!秋はおセンチな気分になっちゃうのかも知れないけどさ、こうもしょっちゅう感動されてちゃ旅が進まないよ・・・。」

「ほんとよね。葉っぱを集めるより、私はコインを集めたいわ。」
「もう、姉さんったら!少しはもっと感性を養って欲しいものだわ。」




・・・その時。


「みなさーん、焼き芋が出来ましたよ!!」

トルネコの声に、皆がわあっと集まる。


皆でホクホクと焼き芋を食べながら、


「いやぁ、この茶色い、カラカラに乾いた葉っぱが良く燃えて、いい仕事をしてくれましたねぇ〜。」



「(・・・茶色い葉っぱって。)」
「(・・・ブライ!)」
「(・・・ぷぷっ!ブライ、枯れて燃えてまでアリーナに尽くした!)」




「ぷぷっ!」



「・・・・・く、くさい。」
「誰ですか、犯人は?」



「おならの匂いもまた、『生物の多様性』ですね。」


「〜〜〜〜〜!」




皆が文句を言っている間に、クリフトはアリーナから預かった葉をそっと聖書にはさめた。


自分とアリーナの葉を近づけて。
こっそり、呟いた。


「・・・日の当たりが悪かろうが、運が悪かろうが、私は木から落ちても貴女様について参りますよ。」


「なんか言った?クリフト。」

「いっ、いいえ!」


クリフトは聖書を胸にしまいながら、
急いで焼き芋を飲み込んだ。


「うぐっ・・・!み、水を!」
「クリフトっ!大丈夫!?急いで食べるからよ・・・!」

アリーナに水を飲ませてもらったり、背中を擦ってもらってクリフトは、さらに顔を赤くさせた。





「(・・・クリフトは年中紅葉してるな。)」
「(・・・ほんと。いつでも見るものを楽しませてくれてるわ。)」





         おわり
 

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