物語2
□敬老の日
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「今日は敬老の日か・・・
全く、あのバカ王もお転婆王妃も、いつまでワシをコキ使いおって・・・
ちょっとは、ゆっくり休ませて欲しいもんじゃ・・・
いやいや、しかし、ワシほどの優秀な家臣は、他にはおらんからのぅ・・・
まだまだ、隠居なんて、できんのぅ・・・
ほっ、ほっ・・・・・。」
ブライが日課の乾布摩擦を終え、今度はオリジナルの健康体操、「ひっくり返って、手足バタバタ」をしている時だった。
ガチャ。
「・・・ブライ、どうしたの?」
「亀さんが、ひっくり返って困ってるみたいー!」
「こら!お年寄りにむかって、そんな風に言うものではありませんよ!!あれは、ブライ様が考案された・・・。」
「コホン!!」
ブライは咳払いをし、立ち上がると、
「まず一つ・・・。ノックもせずに、人の部屋にはいるなぁーっ!!」
「は、はいっ!!」
「そして、二つ・・・。ワシはまだまだ、年寄りではないーっ!!このように、日々鍛錬しておるからなっ・・・!・・・ゼイゼイ。」
「だ、大丈夫?ブライ。」「あまり、大きな声をだされますと、血圧が・・・。」
「お主らが、そうさせておるんじゃーっ!全くもう・・・ぶつぶつ。」
「・・・ブライ、怒らないで。僕たち、今日はブライにお願いがあって来たんだ。」
可愛らしい男の子の声に、ブライは少し頬を緩めながら、
「・・・全く、このような日までワシをコキ使うとは・・・。一体、どんな用なのですじゃ?」
「・・・あのね、ルーラを唱えて、一緒にアネイルに行ってほしいんだ。」
「ね!久しぶりに一緒に、温泉に行きましょう!!今は、家族風呂って言うのもあるみたいなの。私、ブライの背中を流してあげるから・・・。」
「ななっ、何を!それはいけません、ブライ様はご高齢とは言え、男性なのですよっ!!ここは私が、前の旅の時のように、背中を流して差し上げます。さあ、では参りましょうか。」
「ママは、あたちといっしょにはいろうね。」
「はぁ、やれやれ。全くお主ら、ワシの意見も聞かず・・・。」
「・・・そう言うわりに、準備早いわね。」
「『すばやさ』は衰えておりませんね・・・。」
「当たり前じゃ!まだまだ、お主たちは手が掛かるしの。孫に曾孫まで増えて、ワシはまだまだ、ゆっくりできんわい。それ、行くぞ!」
「はーい!」
「わーい、僕、ブライのルーラ大好き!」
「あたちも!」
「ほらほら子供たち、しっかりブライ様に捕まって!」
ぎゅっ・・・。
四人の大事な孫達に笑顔で抱き締められ、
「・・・コホン。」
ブライはまた今年も、幸せの咳払いをひとつ。
おわり