物語3

□うちの2バカ
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バタン!と荒々しく扉を閉めて、
クリフトはつかつかと勇者に詰め寄った。



「勇者さん!」
「な、なんだよ。」


あまりの剣幕に勇者は若干怯えながら、辺りを見回す。


相部屋、が多くなってここのところ、いちいちクリフトが文句を言う男なのだということがわかってきた。


部屋を散らかしっぱなしにするな、人の物を勝手に使うな、この見えない境界の線は越えるな・・・、



めんどくさいと思いながらも勇者なりに気を付けてきたつもりだ。


今回は一体、何だと言うのか・・・



「・・・な、なんだよ?」



思い当たる節もなく、勇者はクリフトに尋ねる。



「・・・あなたと言うはっ!」


きょとんと見上げる勇者を、クリフトはワナワナと怒りに震えながら、


ばっと先ほど出てきた扉を指差した。





「あなたはっ!どうして!」






「『トイレットペーパーがなくなったら補充する』という人間として当たり前のことができないのですかっ!」


「・・・え?」




もっと何か悪いことをしてしまっていたのかと思っていた勇者は呆気にとられながら、
自分の行動を思い出した。



「・・・あー、はいはい。」



そういや、自分が使い終わったときちょうどなくなって、

そのままにしてたっけ。



「ごめんごめん、・・・はっ!お前、もしかして!!」


勇者は汚いものをみるかのごとくクリフトを見るが、


「私はちり紙を持ち歩いていますからっ!・・・でもっ、勇者さん!今度からは気を付けて下さいねっ。」


慌てて否定をしながらも、クリフトは念を押す。


「わかった、わかったってー・・・。」

「絶対ですよっ!あなたの『わかった』は本当にわかってんだかどうなんだか・・・」

「わかった、お前がいちいちうるさい男だってことはよーくわかったからっ!」

「なっ!勇者さんこそ、もう少しマナーというものを身に付けた方がいいですよっ!知らずに人を困らせるというものほどタチの悪いものはないですからねっ。」


「なんだよー、たかだかトイレットペーパーくらいで生きるか死ぬかみたいに騒ぎやがって。お前こそ神官なんだから、そんなことでいちいち説教するなよ。」

「私は今、あなたには神官として接しているのではありません!相部屋の被害者として、助言しているのです。あなたも勇者なら、私を救って下さったらどうですか!」


「けっ、俺だって、お前にとって勇者でいるつもりはねぇ!相部屋の被害者としてだなぁっ!」


「なにをっ!」
「やるかっ!」





そんな様子をアリーナはこっそり覗き見ながら、



「(クリフトがあんなに他の人に心を開くなんて・・・新鮮だわ。お友だちができて良かったわね。)」



一人安堵しながら、二人の痴話喧嘩を見守るのだった。





おわり
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「勇者とクリフトはトイレに行かない!」という方も、申し訳ございませんでした。


2バカ扱いして、今後もくだらない話をさせる予定です。


てか、あの人とあの人も入れて3バカ、4バカ・・・と、 果たして需要はあるのかな(^^;
あんまり人のことをバカと言ってはいけません、私の頭が残念、ということで・・・。
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