物語3

□『うん、わるいやつ』
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―――敵があらわれた!


「・・・なんか、見かけないやつだな。」
「見た目はスライムみたいな感じよ。毒とか・・・高経験値とか!?」
「爆弾岩、みたいなタイプだったら嫌ですね。」

「とにかく先手必勝よっ!たぁーっっ!!」


「ああっ、姫様!」
「アリーナ!」



皆の制止を聞かずに飛び出したアリーナに、ニヤリと敵は不敵な笑みを浮かべる。



「・・・な、なに!?」

「フフフ・・・。」



そして、ガシッ!とアリーナに抱きつくと、



「アリーナちゃんって言うんだね!かわいいっ!!」「きゃー!!」


「このっ!!」



クリフトは嫉妬も露に必死にアリーナから離れさせようとするが、


「は、離れないっ!」
「えっ!?」




「い、痛いよクリフト!・・・この子、別に悪い子じゃないんじゃない?」




確かに体は小さく目はクリクリとしていて、
特に攻撃してくることもなく害はなさそうだ。



「ねぇ、いいでしょう?この子をペットにしても!」「なっ・・・!」
「魔物をペットにするなど、駄目に決まっとるであろうがっ!」


クリフトとブライは目くじらを立てるが、



「異議あり!」



ライアンは高々と挙手し反論する。


「魔物だからって差別するのは良くないと思いまーすっ!現にホイミンだって・・・っ」


「わかった!わかーった!!」


ライアンにこの手の話をさせると延々と長くなることにうんざりしていた勇者は慌てて間に入る。



「俺が許可する!だからもう、先を急ごうっ!!」




「(この暴君め・・・)」
「(どこが勇者だ・・・)」



クリフトとブライの無言の抗議を軽く流しながら、


アリーナは新しいペットにウキウキしていた。



そこへ、



「ルンルン〜♪・・・あっ、きゃあ!」



誰が落としたのか、アリーナはバナナの皮で滑ってしまった。


「あいたぁ・・・。」

「そんな、得たいの知れないわるそうなやつを連れて歩いているからですよ。・・・ホイミ。」


明らさまに不機嫌なオーラを放ちながらクリフトは、アリーナを起こしホイミをかける。


「うん、わるいやつ。」


魔物は嬉しそうに言うが、アリーナは悔しそうだ。


「一体誰がこんなところにバナナの皮なんか・・・。ああっ!」


アリーナがふと自分の背後を振り返ると、


「やだぁ!タイツ破けてる!これ、お気に入りだったのにっ。」

「なっ!!」


クリフトは慌てて自分のストール(あれは、スヌード??)を外しアリーナの足を覆い隠す。


「そういう問題じゃないでしょうっ!」
「あー、どうすんだよ。着替えったらもう、アレしか・・・。」

「いけませんっ、あんなもの!急いで私が縫って差し上げますっ!!」


「ははっ、うん、わるいやつ!」



その後も何かとアリーナは不運に見舞われる。

必死にクリフトもアリーナを庇うが、


「・・・ゼイゼイ。」
「・・・も、もしかして。」
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