物語3
□「7人の主人公達」
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*第一幕*
『ライアンが旅に出た理由』
ここは厳格な雰囲気漂うバドランド・・・
王宮戦士ライアンは今日も、部下の戦士たちを従え剣の稽古に明け暮れていた。
キラキラと光る汗を流しながら、満面の笑みで戦士たちを見守るライアン・・・
しかし。
「・・・・・いい人なのに。」
王宮戦士達のため息混じりの呟きに、ライアンは気付くはずもなかった。
「・・・・・王様、もう限界です!」
切羽詰まった王宮戦士達の声に、王は何事かと耳を傾ける。
「・・・ライアン殿の事です。」
「・・・はて。あやつは優れた戦士でありながらまた、優れた人格者でもあったはず。何事か・・・申してみよ。」
王宮戦士達は顔を見合せ、意を決したように話しだす。
「・・・ライアン殿を、我々の指揮官から外して頂きたいのです。」
「・・・・・?」
王は目で先を促す。
「・・・・・。」
「・・・その、実は。」
「指導方法が下手、というか・・・。表現方法がおかしい、というか・・・。」
「・・・・・は?」
真意を解りかねる、という表情の王に、戦士達は必死に言葉を続ける。
「だって、あの人・・・!全て『はいーっ!』で指揮を執るんです!」
「実戦訓練で『突撃ーっ!』『行けーっ!』とか言ってくれたらこっちも士気あがるのに、
あの人は『そぉれ、はいーっ!』『そこ、はいはいーっ!』」
「後ろに構える鉄砲隊にも、『打てーっ!』『放てーっ!』とか言ってくれたらこっちも士気あがるのに、
あの人は『はいはいはいーっ!』『はい、もういっちょ、はいーっ!』」
「自分だけなんかテンション上がってるんですけど、こっちはなんか興醒めっていうか・・・。も、もちろん悪い人じゃないんですよ!!いい人なんですけど・・・。」
「なんかこう、残念、というか・・・。」
部下達にここまで言われているライアンに王はため息をつきながら、
「・・・どうしたものかのう。あやつは優れた戦士で、人格者なのに。・・・そうだ!」
王は膝をポン!と打つと、急いでライアンを呼ぶ。
「た、只今参上致しました。」
生真面目に走って来て、息を切らしているライアンを少し不憫に思いながらも、王は言う。
「ライアンよ。勇者を探す旅に出るのだ!!」
ライアンは顔をばっと上げ一言、
「は、はいーっ!」
「・・・・・。」
「(王様、ご英断です!)」「(ま、まぁあやつは、イエスマンだからな・・・。悪いやつではないのだ。)」
こうしてライアンはただ一人、勇者を探すためにバドランドを旅立ったのだった。
おわり