物語3

□「許してあげる。」
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「まったく、もう・・・。」



私は、やっと合間を見つけて椅子に座り、
伸びきったラーメンを食べる。


向かいには、もうひとつの、
半分も食べてない・・・。


「・・・ポポロっ!!」

ヒステリックに叫び出したいのをぐっと堪え、
私は息子を探す。


・・・いいえ、わかってる。
ちゃんと彼は寝巻に着替え、歯も磨いて、
ベッドで眠っていることを・・・。


シーツに包まるようにして寝息をたてている息子。 寝顔は赤ちゃんの頃から変わらない、天使のようだ。頬の輪郭も、まだまだふっくらとして、本当に可愛い。


可愛いのに・・・。



今日は特に仕事が忙しくて、夕食も作る気力がなくて。
ここは便利なエンドールだから、ポポロが食べたいと言ったラーメンの出前をとった。


背中越しに、ポポロが何か話しかけてきていたけど、私は一緒に食べてやることも出来ず上の空で、
とにかく必死に仕事をこなして。

はっと気が付いた時にはもう、ポポロは眠ってしまっていた。



こんなに可愛い、大事にしたい子供なのに。



私は涙を堪え、用事をこなす。


自分も寝巻に着替え、

「玄関よし、窓よし。」

声に出して施錠を確認する。


このエンドールで、銀行なんてやってるんだもの。
そして、今、夫は・・・。


母一人、子一人みたいな生活。

誰も知り合いのいない、こんな大きな国に来て。
そもそも、エンドールで店を持ちたいなんて夢をもってたのは、あの人の方だったのよ。

私はその夢に向かって頑張るあの人を、支えたかっただけ。


だけど今じゃ、
「私に丸投げ・・・。」


家庭の事も、子育ての事も。


ポポロの運動会にも来れなかった。
あの切なそうなポポロの顔を見るのも私、慰めるのも私。


パパの分、一生懸命走ったわよ。
そりゃ男の人にはかなわないけど、
ビリにはならなかったわ。


「さすがネネさんですなぁ。」
「いつも頑張ってらっしゃって。」



ええ、そうしないとやっていけませんもの。
私がやらないと、いけないんだもの・・・。
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