物語1
□クリフトと父
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最期に王妃は、
「どうかこの国を、民を、土地を愛して。貴男にはそれができるから・・・。側にいてくれてありがとう。ごめんなさい・・・。」
そう言って、この世を去った。
私は、罪の意識に苛まれながら、それまで以上に畑仕事に精を出した。
思えば、ただの神官だった私に畑仕事を教えてくれたのは王妃だ。
王妃が教えてくれなければ、私はこの国ではただのやっかい者だった。
王妃のおかげで、今でも私はこの国にいることができる。
せめてもの償いに・・・。
王妃が望んだ国に、私が変えてみせる。
そう思って過ごしてきた。
そして今、王妃のおかげで、クリフトの為に畑を耕す事ができる。
私は、初めて王妃と、ソレッタに来れたことに感謝した。
クリフトが助かったなら、再びこの国でパテキアを育てよう。
必ず、正しく使ってみせる。
パテキアを求めてくる他国とも、上手く外交してみせる。
だから、どうか。
どうかアリーナ様、ブライ様、一刻も早く、お戻りください。
祈りが通じたのか、ブライ様と勇者様達が戻られた。
「ささ、早く種を!」
種を用意していた畑に蒔くと、パテキアは凄い早さで成長した。
よかった!
早速収穫し、ブライ様に託す。
・・・本当は、私もついていきたかったが、アリーナ様が心配だ。
ブライ様は、アリーナ様がまだ洞窟にいること、激しく混乱している為お供の者達に任せ、まずはクリフトを助けることを優先したことを話してくれた。
ブライ様達を見送り、私はそっと洞窟をのぞく。するとそこには、
「いやぁっ、クリフトが!クリフトを助けなきゃ!!」
涙しながら叫び、混乱しながら進むので、道に迷っている彼女の姿があった。
・・・こんなに、か弱き乙女であったとは。
お供の者達は、彼女についていくことに必死でなかなか種があった場所まで誘導してやれていない。
彼女の体には、無数の傷があり、私は隠れながら彼女に回復呪文をかけた。
「・・・クリフト?」
はっとして、彼女は我に返り、自分の癒えた体を見た。
「・・・しっかりしなくちゃ。」
彼女は冷静さを取り戻し、お供の者達の誘導に従った。
宝の箱が空だったときの彼女の絶望の様子は、痛ましかった。
しかし、私は嬉しかった。自分の愛するものを、・・・愛してくれる人がいる。
彼女は、クリフトを愛している。