物語1

□クリフトと父
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しかし、やはり私たちには、自分たちの為に血を流す人達がいるという現実を受け入れられなかった。

私を渡さぬとソレッタに伝えに行った使者が、・・・彼らなりの見せしめなのだろう、右手を折られて帰ってきた。
使者は屈強な男で、「なんてことはない」と言ってくれたが日々の生活の不自由そうな事・・・。今までの、誇りを持っていた兵士としての仕事も失い、国の年金で過ごしている姿は、とても痛々しかった。


これから戦争になれば、もっとたくさんの人が苦しむことになる・・・。
しかし、私がソレッタにいけば・・・。
むしろ、ソレッタとサントハイムに国交ができ、国益にもなる。



私とマリアは、涙をのんで別れた。

お互いに、お互いの幸せを願う。
永遠に相手を想い続けるという言葉は胸に秘めたまま・・・。


二番目の妻、王妃は優しい女だった。
もちろん、気性の激しい一面もあったが。
私が、彼女を愛せないことを最初はひどく怒った。
私も、どこかで彼女を恨んでいた。

そうやって互いに責め合っていれば、彼女は・・・。

次第に彼女は、自分を責め始めた。

私を無理やり手に入れたこと、別れさせた妻子のこと・・・。

負の感情が他人に向いているとき、人は強いが
自分に向き始めると人は弱くなる。

彼女は、次第に病んでいき・・・。
見兼ねた大臣が、「パテキアを」と言ったが、
私は種を取りには行かなかった。

「病は気から」とは、よく言ったものだ。
私は、彼女の不調の原因が自分にあるとわかっていた。
しかし、私には、どうしても・・・。

どうしても、マリアを裏切ることができなかった。

マリアをこんなにも愛していなければ、
マリアとの愛が、ただの通過点であれば、
私は王妃を愛せただろう。なんとか、相手を病ませるほどには傷つけず、日々を共に過ごせただろう。

・・・私は、王妃に何もしてやれず、王妃も私に何も求めなかった。

そして、王妃も、国でパテキアを持つことを望まなかった。
王妃は、今までのパテキアを武器に軍事国家となったソレッタを嫌っていた。
パテキアがあったから、様々な災いが起きたと考えていた。
強い力がなくとも、身の丈にあった人々の幸せがあればいいと、常々私に話していた。
だから、どんなに自分が病んでもパテキアを求めることはなかった。
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