物語1
□神官クリフト
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本当は、神父長に聞いてもらいたかった。
自分の、この、誰にも言えぬ想いを誰かに打ち明けられたら、どんなに楽になるだろう。
しかし、できない。
それほどまでに、クリフトのアリーナへの想いは、深く、重く、
恐ろしいものだった。
自分のこの想いが周囲にばれたらどうなるか。
確実に、今までのようにはいかないだろう。
姫付きの神官、第一の家臣、学友、教師、友人役・・・。
そのすべてが、自分から奪われるだろう。
そして、自分を信じてくれているであろうアリーナを、裏切ることなどできない。
あの純粋な瞳、笑顔、身体。
もし自分がアリーナを、「異性」として見ていると知ったら、どう思うだろう。
今までのように、接してはくれないだろう。
小さな頃から、自分を兄のように接して甘えてきてくれたアリーナ。
自分はその役に甘んじながら、これ以上は決して望むまい。
いや、望めるはずがないんだ・・・。
クリフトにとって、アリーナは眩しすぎた。
眩しすぎて、目を細めてしまうから、気付かなかったのだ。
アリーナも、自分のことを好きでいてくれることに。
同じ視線で、クリフトをみていることに。
しかしそれは、アリーナも同じだった。
この気持ちがなんなのか、誰にも相談できぬまま、持て余していた。
二人の恋は、始まったばかり。