物語1
□回復して・・・
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・・・次の日
「・・・・・。」
「・・・・・。」
アリーナとクリフトが話していると、
トントン。
部屋をノックする音が聞こえた。
「はい。」
クリフトが返事をすると、
「・・・あの、君の声が聞こえてきたから、意識が戻ったのかなと思って。」
「あなた様が、勇者様ですね。姫様から話を聞きました。この度は本当に・・・ととと。」
「大丈夫?クリフト・・・」
ベッドから立ち上がり、礼を言おうとしてよろめいたクリフトを、アリーナが甲斐甲斐しく支える。
「・・・はい、申し訳ございません。意識の方は戻ったのですが、体の方がまだ・・・。しかし、順調に回復しております。本当に、ありがとうございました。」
「い、いやいや、良かったです!(ちくしょう、背、負けてる・・・)」
「回復までもう少しですね。私はトルネコと申します。」
「私はマーニャよ!」
「ミネアです、よろしくお願いします。」
「クリフトと申します。今はこんなですが・・・。回復したら、何でも言って下さいね。」
クリフトが皆に微笑みながら言う。
アリーナは、胸が騒ついた。
クリフトが、女の人に向かって微笑むだなんて・・・。
こんなで、一緒に旅なんて出来るのかしら・・・。
「アリーナっ!ちょっといらっしゃい!」
「・・・え?」
「彼氏、すっかり良くなったんじゃないっ!」
「だ、だから彼氏じゃ・・・っ!」
「はいはい、そうね。じゃ、アリーナちゃん借りて行くから〜っ!」
「姫様っ・・・!」
「大丈夫だよ、クリフト。マーニャはただ、アリーナが可愛くて仕方ないみたいだ。」
「・・・そ、そうですか。」
勇者が「アリーナ」と呼び捨てにする。
クリフトは、心が騒ついた。
自分がどんなにあがいても越えられない「身分の差」を、勇者様はこんなにも、容易く・・・。
こんなで、一緒に旅なんて出来るだろうか・・・。
その時、
「クリフト〜っ!かゆいっ、助けて!!」
アリーナが顔を押さえながら部屋に飛び込んで来た。
「姫様!どうされましたか!?」
「ごめんね、これで綺麗にしてあげようと思ったんだけど・・・。」
マーニャが申し訳なさそうに化粧品をクリフトにみせる。