稲妻11 夢

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「………」


高城のお母さんはとても良い人だと思う。
あの後上がっていくかと聞かれて少々迷ったが、結局上がらせてもらうことにした。
高城の見舞いに来たのだから、少しくらい話をしたいからな。

しかし。


「ん……」

「………」


部屋に入れてもらったのは良いが、高城はベッドの上ですーすーと静かな寝息をたてていた。

額に冷えピタを貼り、ぐっすりと眠る高城の髪をそっと撫でる。
明澄(高城のお母)さんの話を聞く限り、高城は朝からずっと眠っているらしい。
よほど疲れていたのだろうか…。
サッカー部の手伝いが負担になっていたのだとしたら、申し訳ないと思う。


「ん…」


暫く高城の寝顔を見つめていると、小さな呻き声と共に高城の瞳がうっすらと開いた。


「あぁ、高城。起きたか?」

「え…?」

「大丈夫か?」


まだ起きたばかりで覚醒していないらしく、高城は不思議そうに俺を見上げる。


「鬼道くん?」

「? なんだ?」

「鬼道くんだー」


あはっといつものように笑いながら手を伸ばしてくる高城の手をそっと握れば、高城はへにゃりと顔を緩めた。
だが、すぐに何か考えるように難しい顔をする。


「高城?」

「……」


どうかしたのかと思い、空いている方の手でそっと頭を撫でると高城は気持ち良さそうに目を細めた。
それがなんだか愛しく思えて笑みが溢れる。
暫くすると、高城はまた何かを考えるかのように顔を歪めた。
その後、ほんのりと赤く染まった頬で俺を見上げる。


「鬼道くん、私ね、鬼道くんのこと…」


高城は一瞬真剣な顔をした後、またあの笑顔で俺を見た。





好き、だよ。

(そう、幸せそうに呟いて)


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