稲妻11 夢
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『メール受信 高城あずさ』
「高城…?」
メールの着信音が鳴り、ディスプレイを開けばそこには高城あずさの文字。
こんな朝からどうしたんだ…?
疑問に思ってメールを開き、その内容にため息を吐く。
『ごめん、風邪ひいちゃったみたい…。
今日はお休みするね。
鬼道くん、部活の練習頑張ってね!』
「……全く、あいつは…」
昨日ああ言ったばかりだと言うのに。
次から雨の日は一緒に帰ることにしよう。
高城に風邪を引かれてしまっては、気になって何も集中できない。
『分かった。
大丈夫か?
安静にしていろよ。
放課後、お見舞いに行く』
そう返信をして、携帯を閉じた。
結局部活が終わるまでメールの返事は来なかったが、高城はきっと寝ているのだろう。
でなければ、返信の早い高城がメールを返さないなんてことはあり得ない。
……嫌われてさえいなければ。
とりあえず、高城の家に行ってみよう。
見舞いと証して高城に会いに行く、というのが正しいが。
◇
「ここ、か」
表札を見れば、“高城”とある。
正直高城の家の場所はうろ覚えであったが、春奈が何故か知っていたようで喜んで教えてくれた。
どうやら春奈は俺を応援してくれているらしい。
それは素直に嬉しいが、あの好奇の目で見られるのは少し居たたまれないな…。
「あら、家に何かご用かしら?」
「あ、」
インターホンを押そうとした所で後ろから声をかけられる。
振り向くと、高城によく似た女性が買い物袋を抱えて立っていた。
高城のお母さん、だろうか。
「あずさのお友達かしら?」
「はい、鬼道有人と言います」
そう答えれば、その女性はにっこりと笑って俺に近づいてきた。
近くで見れば見るほど似ていると思う。
特に笑った顔がそっくりだ。
高城も、大人になったらこうなるのだろうか。
「あずさのお見舞い?ありがとうね」
「いえ。高城…、さんの様態は…」
「大丈夫よ。朝に比べたら大分良くなったみたい」
「そうですか!良かった…」
その言葉に安堵する。
ただの風邪だとは分かってはいるが、心配でしょうがなかったから。
「鬼道くん」
「はい?」
「鬼道くんはあずさの彼氏、かしら?」
「はっ!?」
いきなりの発言に驚く。
「ふふっ、あずさがいつも鬼道くんの話をするから、彼氏なのかなと思って。違った?」
「ち、違います!」
「え?そうなの?」
驚いた。
まさか高城と俺が付き合っていると思われていたとは…。
しかも、高城のお母さんに。
……俺としては好都合だが。
「鬼道くんがあずさの彼氏だったら、私も安心だったのに。惜しいわね…」
「え?」
「ふふっ、まぁ、頑張ってちょうだいね。次はあずさから改めて紹介してもらうことを祈るわ!」
「あ、ありがとうございます!」
母親公認?
(付き合う前に認めてもらえるとは…)