稲妻11 夢
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「38度2分…」
「風邪ね。今日は先生に言って、学校はお休みさせてもらおっか」
「ん゛ー…」
お母さんに言われて、小さく頷いておく。
鬼道くんとの電話を終えた後、やっぱり体調が悪くてすぐに寝た。
……寝たと言っても、夜中に何回も起きちゃって実質寝れたのはいつもの半分くらいなんだけどね。
「あー…、鬼道くんにメールしとこう」
重たい身体を起こして、携帯を手に取る。
その動作でさえも気だるくて、はぁ、とため息を吐く。
あーあ、やっぱり濡れて帰るんじゃなかった。
また鬼道くんに怒られちゃうよ。
ピコピコと携帯を打ちながらそんなことを考える。
頭を叩かれるのはもう嫌かな。
あれはほんとに地味に痛いから。
「風邪引いたから、今日はお休みするね、っと」
送信ボタンを押して、ベッドに沈み込む。
少し、寝よう。
早く治らないかなあー…。
鬼道くんに、会いたい。
瞼を閉じれば、急に眠気に襲われて私は眠りに落ちた。
◇
「ん…」
「あぁ、高城。起きたか?」
「え…?」
「大丈夫か?」
目を開けると、そこには鬼道くんの姿。
あれ?なんで、鬼道くん?
おかしいな、鬼道くんはまだ学校にいるはず。
でもここは私の部屋で……。
(あ、そうか)
これは、夢だ。
夢じゃなければ鬼道くんがここにいるはずがない。
「鬼道くん?」
「? なんだ?」
「鬼道くんだー」
あはっと笑いながら手を伸ばせば、鬼道くんはそっと手を握ってくれた。
夢も中でも鬼道くんはやっぱり優しいんだ。
「高城?」
「……」
夢の中の鬼道くんが首を傾げる。
それから空いている方の手で私の頭を撫でてくれた。
それが気持ち良くて目を細めると、鬼道くんはにっこりと笑ってくれた。
この手が、その笑顔が、好き。
優しくて、時に厳しい貴方が、好き、なんだ。
ねぇ、鬼道くん?
夢なら、素直になっても良いよね?
夢なら、貴方を困らせなくて大丈夫だよね?
夢なら、貴方に気持ちを伝えられる気がするんだ。
「鬼道くん、私ね、鬼道くんのこと…」
好き、だよ。
(夢なら、)
(覚めないで欲しいけれど)