稲妻11 夢

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『ん゛ー…っ』

「どうした、高城」

『ん゛ー、鼻がつまっちゃって…。風邪かなあー…?』


ズルズルと鼻をすする高城に苦笑する。
…やはり、さっきのことがいけなかったのだろう。
途中から傘の中に入ったとは言え、高城の身体は既に雨で濡れてしまっていた。
もっと早くに追い付いてやれればよかったんだが、高城は見掛けによらず足が早いらしい。
追い付くのに少し時間がかかってしまった。


「あんな雨の中を帰ろうとするからだ」

『うぅ゛、そうなんだけど、さぁー…っくしゅ!』

「大丈夫か?」

『大丈夫だと思う…。っくしゅ!』


くしゃみをする高城に焦る。
今、高城の傍にいられないことが少しもどかしい。
電話越しに聞こえる彼女の声は少し鼻声で、時折ごほごほと咳を溢す。


「熱があるんじゃないか?」

『ん゛ー…、さっき計ったときは37度8分だったかなー』

「37度8分!?」

『あはっ』


軽快に笑う高城にため息が出る。


「熱、あるんじゃないか。今日は早く寝ろ。良いな?」

『んー…、』

「高城?」

『でも、さあ』


少し口ごもりながら言われた言葉に、胸が高鳴る。
誰に見られているわけでもないが、にやける口許を片手で隠し、そうか、と答えるのが精一杯だった。





『電話、切りたくないなー…』

(それは風邪の寂しさから?)
(それとも…、)



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