稲妻11 夢

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『鬼道くん鬼道くん、』


いつもの綺麗な笑顔と、伸ばされた腕。
一緒に帰ろうと言った高城に、胸がドクンと高鳴る。
……本当は俺が、その言葉を言うはずだったんだがな。


「あぁ」


そう頷いて手を握れば、へにゃりと顔を緩ませる高城に、期待しても良いのだろうか。



* * * * *



「凄かったねー!」

「そうか?」

「うん!
サッカーがあんなに凄い競技だとは思わなかったよ!」


キラキラとした笑顔で隣を歩く高城に、頬が緩む。
右手には高城の小さな手を握り、夕日に染まりつつある道を並んで歩く。


『高城、』

『ん?』

『…手を、繋いでも良いか…?』


そう言った俺をまじまじと見つめた後、高城は頬をほんのりと赤く染めた。
それからいつもとは違ったはにかんだ笑顔で俺に手を差し出してきたのだ。

付き合っているわけではないのに、こんなことをしているのはおかしいだろうか。
しかも俺は、一度高城にフられた身だ。
だが、彼女がこの行為を嫌がらないと言うことは、少しは脈があると言うことだろう。
それが嬉しい。


「あ、鬼道くん。私、こっちなんだ。
鬼道くんはそっちよね?」

「あ、あぁ。……そうだな」


あぁ、もうそんな所まで来てしまったのか。
高城と居ると、時間が早く流れていく気がする。
もっと一緒にいたいなんて言ったら、高城は困ってしまうだろうか。


「じゃあ、また明日!」

「あぁ、明日」


するりと俺の手から離れていく高城に名残惜しさを感じるも、彼女を困らすわけにはいかない。
ひらひらと手を振る彼女に自分も手を振り替えして、踵を返す。


「あ、ねぇ、鬼道くん!」

「? なんだ?」


その時、何かを思い出したかのように高城に名前を呼ばれた。
何事かと思って振り向けば、カバンの中身をがさがさと漁る高城の姿があった。
そこから何かを取り出すと、ニッコリと笑ってこちらに近づいてくる。


「……?携帯、か?」

「そう!」


そう言えば、高城のメアドや番号を聞いていなかったな、と今更ながら思い出す。


「鬼道くん、確か携帯持ってる、よね?」

「あぁ、持っているが…」


自分の携帯をポケットから取り出す。


「よし、メアド交換しよう!」

「い、良いのか?」


そう問えば、当たり前!と言って笑う高城。

……全く。
いつもいつも、先手を越されてしまうな。
それと同時に思う。
高城は、俺のことをどう思ってくれているんだろうか?
少なくとも、嫌われているわけでは無さそうだが。
赤外線ねーと言って笑う高城を見下ろす。

……自意識過剰かもしれないが、高城は俺に好意を向けてくれていると思う。
でなければ、部活を見に来てくれたり、一緒に帰ったり、ましてや付き合ってもいない相手と手を繋いだりなんてことはしないと思うから。


「よし、送信完了!」


パチン、と音をたてて閉じられた携帯を手渡される。
開いてアドレス帳の確認をしてみれば、そこには“高城あずさ”と、彼女の名前があった。


「いつでもメールか電話してね。
私、基本的に暇してるからさ」

「分かった。
高城も、暇なときは俺にメールか電話をしてくれ」

「うん、ありがとう!」


本当なら、暇でなくともメールも電話もしてほしいが。
そう告げれば、笑いながら分かったと言う高城に笑みが溢れる。




携帯電話

(はい、もしもし)
(あぁ、高城か。どうしたんだ?)
((電話越しの彼女の声は、))
((なんだか新鮮だった))




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