いつまでも続くと思っていた訳じゃない

ただ
続けばいいと思ってただけだ


オレは生身の方の指、薬指の付け根に存在し続けるそいつに口づけた




□■繋がり■□















「おチビさん、こいびとって何するの?」

いきなり告って来た、敵の筈のこいつは頭の上ら辺にクエスチョンマークを浮かべながらオレに聞いた


「知らん」


読んでいた本から顔を上げもせずにそう返せば、こいつは
ふーん…
とだけ呟いて、ばいばい。と窓から出て行った



少し冷たくし過ぎたかもしれない
あいつの言った、『恋人』の在り方なんて本当に知らないが、
それでも今のやり取りは少しも『恋人』なんかじゃないとだけはわかった



だがその時のオレの心配は杞憂に終わり、次の日に来たこいつは自分で『恋人』の知識を仕入れて来た



ばかなにんげんの雑誌を参考にしたんだ



と嬉々と語ったそいつに連れられてオレは街に出た


いつの間にかちゃっかり手が繋がっているところとか、意外としっかりしてるな、と思った


 



人間っぽい装いをしたこいつと、赤でない色を着たオレと

周りからはどんな関係に見えたのだろか


『恋人』には見えずとも、敵同士にはもっと見えなかった筈だ


友達、とかかな


ただその『友達』は、洒落た宝石店に入ってペアの指輪を選んだ

シンプルなやつ


あいつのセンスは悪いと思ってたし
(普段の格好とかから)
オレも散々いろんな奴からセンスが悪いと言われて来た

だがまぁ、悪くないものになった思う



細く輝く飾り気のないそれをお互いの指に付け合った



付け合う行為はオレが教えた


指輪を買う、までしかこいつの仕入れた知識にはなかったらしい


「どの指に付けるの?取り敢えず、機械鎧の右手には付けらんないよね」


そう言って来たから思わず苦笑して仕舞った



左手の薬指

それくらいは知ってたからそう教えた





「病める時も健やかなる時も、敵同士でも、永遠に互いを想い続け愛し合うことを誓いますか?」


「何それ?」


「いいから、誓えよ。嫌か?オレと永遠を誓うの」


「いや…、誓うよ。一生おチビさんを愛し続ける」


「ん、オレも」



 


オレはエンヴィーの左手の薬指に居座るその指輪に口づけた

エンヴィーもオレのそれに口づける


「愛してる、エドワード」








そうしてオレ達は永遠を誓った





























もう、いきなりあいつが窓から入って来ることはない

だからオレは、盗み見られる心配もなく手袋を外して現れた指輪にキスを落とした





「あいしてる…」





きっとあいつはもう
こんな指輪なんて付けてたりしない

オレは手袋の中に隠し続けているけれど
あいつはいつも生腕だしな








細く輝く飾り気のない指輪


頭の上に翳してみれば、きらきら光った




それはオレとあいつを繋ぐ絆






オレと過去を繋ぐ糸






想い出の恋人と繋がる





マリッジリング












†END†


(このエンヴィーがまだこの指輪を大切に持ってるだなんて、おチビさんは思ってないんだろうな)





 

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