【シーズンSS】
□Valentine SS
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【アイアンハイド&ジャズ】
「バレンタインデーか…」
神妙な面持ちでそう呟いたジャズをアイアンハイドがたしなめる。
「任務中だぞ、私語は慎め」
「…彼女がいるヤツはいいよな」
アイアンハイドの片目が横にいるジャズを睨む。
その視線にちょっとたじろぎながらジャズが慌てて答えた。
「今は向こうもスタンバイ中だ、少しぐらいいいだろう?」
「まったくお前はいつになったら一人前になるんだ」
「バンブルビーでさえチョコをもらったんだぜ?」
「だからなんだ」
「別に」
まったく面白く無いという顔で斜め横を向くジャズにアイアンハイドが眉根を上げた。
「なんだお前も欲しかったのか?あのチョコとかいうやつを」
「いや、俺は別に…」
「じゃ、好きなやつでもできたか」
「な……!」
ジャズが驚いた顔でアイアンハイドを見る。
見るからに無骨で、戦闘と武器以外に興味などないというアイアンハイドからの意外なセリフだった。
“やはり女ができると違うもんだな…”などと勝手に思いながらも反論は忘れない。
「別にそうじゃない。ただ…」
「ただ?」
「オレに無いってのはおかしいだろっ!」
「フッ…なんだ、もらえなかったのか」
“何か今ものすごい事を言われた気がする…”
アイアンハイドの言葉がジャズのブレインサーキットを直撃した。ガーンガーンと何かがまるで内側から鐘を打ち鳴らしているような感覚にクラッとなりながらも、倒れまいと踏ん張りながらアイアンハイドを睨む。
「もらったに決まってるだろう!その…あれだ、数だよ数!オプティマスは片手ほども貰ったって言うじゃないか」
「あんな物一つ貰えば十分だろうが」
アイアンハイドは相変わらずセンサーに集中した様子で、ジャズの焦りなどまるで意に介していない。
「そりゃ、そうだが……」
「一つは貰えたんだろう?」
「…そりゃ、まあな…」
「だったらいいだろう。さっさと配置に着け」
「ああ…」
『アナベルから…』とはとても言えないジャズであった。
―Fin.
(2012 02 18)